小さなクルマでどこまでも。 [車輪あるモノ]
大きなクルマは好きじゃない。
仕事で乗っているハイエースバンは決して小さくはないが、
用途と目的を考えた末の選択であって、自分の趣味嗜好とは全く外れている。
ある意味、あれは道具箱なのだ。
もう7年乗っているが、仕事が軽の1ボックスで完結するなら
それに越した事はないといまだに思う。
生活の一部になっている車が小型車だから、
余計そう思うのかもしれないが。
という訳で、今回は我が家のクルマの話。
そもそも独身の頃はそれなりにクルマ趣味もあって、
2T-Gのレビンだの4A-Gのセリカだのと暮らしていた時期もあった。
ランチアデルタ・インテグラーレなんかに憧れた頃もある。
バイクも好きだったが、車も大好きだった。
ところがどんな魔がさしたのか、その後MG-Bなんて古くて遅いクルマを気に入ってしまったために、
4輪に関しては動力性能を捨てる事になる。
けれども、確かにそれを補って余る悦びはあった。
それに加速と車体を操る楽しさを得たい時は、バイクに乗ればいい。
そう思うと、ひとつ身軽になれたような気がした。
やがて、当時のガールフレンドだった妻と暮らす事になり、MG-Bは手放す事にした。
妻は自分のクルマを持っていたので、二台も車は必要ない。
それに当時は妻のバイクもあったので、乗り物に事欠くことはなかった。
あの時私は、これからも続いていくであろう趣味として、バイクを選んだのだ。
MGを売ったお金のほとんどは、披露宴の食事代となって来てくれた皆の腹の中へ消えていった。
それで良かったのだと、今でも思う。
そうして妻の乗っていたフェスティバが、我が家のクルマになった。
なぜかフォードのブランドで売られていたが、中身はマツダ製。
ほぼ屋根全体が開くキャンバス・トップが売りのコンパクトカーだった。
1.2Lのどうということもないエンジンだったが、二人で乗るには必要にして充分な力を汲み出してくれたし、
広く開放的な室内は、長い距離を乗っても快適。
フェリーで海を渡り、北海道を旅したのもこのクルマだった。
屋根に大きな開口部を持つために、車体剛性の低さは否めないものの、
そもそもそういう事をとやかく言うクルマでもないしね。
それが気にならない乗り方をすればいいだけの話だ。
雨の日の、ぱたぱたとキャンバストップを叩く雨音は、MGの幌の下で聞いていた音と実は同じ。
そんなところもひっそりと好きだった。
***
やがて登録から10年が過ぎ、走行距離11万キロを越えたところで乗り換える事になり、
代わりにフェスティバ・ミニワゴンがやって来た。
これもフォードブランドだったが、中身は初期型のデミオ。
我が家ではフェスティバ2号と呼ばれる事になる。
エンジンは1.5Lになり、高速道路の追い越し車線へ出るのにそれほど遠慮することはなくなった。
固めでもじんわりと体を受け止めるクッションと、どんな場合でもどこにも底付きを感じさせないシートは、
このクラスには不釣合いなほどの出来。
ドアは4枚になっても、見た目を裏切る居住性の良さは見事に継承され、出来のいいシートと相まって
出掛けるのが楽しい車だった。
妻の毎日の足として、休日のドライブの友として過ごした時間は15年。
走ったのは9万キロ。
なんだかあっという間だった気がするけれども、
もう充分働いてくれた事だし、そろそろ別れる時だろう。
***
こうして新しいクルマがやって来る。
今度もありふれた小さなヤツだが、我が家にとってクルマとはそういうものだし、それでなにも不自由はない。
まかり間違って大金が転がり込んだとしたら、FIATやAlfa Romeoになったりするかもしれないけど、
やっぱり小さなクルマを選ぶだろう。
クルマがもたらしてくれる悦びは、その大きさには比例しない。
小さくても、深く長く、暮らしに寄り添いながら付き合えるクルマはいくらでもある、と思う。
自分にとってしっくり来るクルマと付き合っていくのが、
一番幸せですよね。
by うえいぱうわ (2011-10-02 01:44)
フェスティバは懐かしい過ぎる車!!
昔々、フリーで仕事始めて間もないころ、
フェスティバに乗っているディレクターさんと
北海道のあちこちへ、取材に出掛けました。
あのころは毎日、忙しかったけれど、
いろんな変わり目の時期で愉しかったなぁ(遠い目
by MORIHANA (2011-10-02 09:51)
フランス何かは小排気量を力いっぱい走らせるそうです
ですから私は非力なセローを力いっぱい・・・(^^;
楽しいサイズってありますよね(^^)b
by SerowGOGOGO (2011-10-02 19:34)
我が家にも初代RAV4のミニカー、ちゃんとあります(笑
小さいのは良いですね。5ナンバーで十分じゃないかと。
キャンバストップのフェスティバ、素敵でしたね。
マツダって、社内に趣味人がいるんじゃないかという気がします。
by harry (2011-10-02 21:02)
車が大きくなるとバイクの出し入れが大変になるので
我が家も小さい車を長く乗ることを信条としています。
フェスティバのキャンバストップやシティのカブリオレ、
かわいかったですよね。
by カズ− (2011-10-02 21:05)
★うえいぱうわさん
フェスティバは自分で選んだ車ではないんですけど、
スペックやブランドから開放される清々しさを
学んだような気がします。
おかげであまりお金を掛けなくても、幸せなカーライフが送れてますよ。
★MORIHANAさん
ご存知でしたか、奇遇だなぁ(笑)
一頃はバイクでツーリングに行くより、
2人でフェスティバで出掛ける方が多かった時期もあるんです。
自分の中でいろんな価値観が変わった頃だったんでしょうね。
あの小さな赤いクルマが、そのきっかけを作ってくれたのかもしれません。
★SerowGOGOGOさん
ヨーロッパの小型車は、昔から楽しそうなのがたくさんありますね。
そういえばフェスティバは初期のFIAT pandaみたいな雰囲気も。
うちのはMTだったから、けっこうきびきび走ってくれましたよ。
by YASH (2011-10-02 21:11)
★harryさん
これってチョロQなんですよ。
新車で買ったときにディーラーで貰ったそうで、まだ現役で走りますv
1号の堂々とした明るい吹っ切れ感といい、
2号の新車当時から10年前のヨーロッパ車みたいな佇まいといい、
マツダの小型車ってトヨタとは対照的ですよね(笑)
★カズーさん
路上でも、一人二人しか乗っていない巨大なミニバンをもう少し小さくしたら、
少しは渋滞が減りそうなのに… なんて行ったら嫌われそうだけど(笑)
ずいぶん月日が流れてもオープントップはごく少数派のままですけど、
そういう体験をしてこれたのは幸せだったと思ってます。
冬晴れの日なんかに青天井で走るのは気持ちいいんですけどねぇ…。
by YASH (2011-10-02 21:48)
こんにちは。
身の丈や生活に合った車と上手く付き合って行きたいですね。
ウチも、アルファの中ではピッコロ(小さな)な145が偶々(147への代替わりのキャンペーン)安く買えたから、長く付き合ってます。
by HIRO (2011-10-02 22:23)
おー懐かしい。そのフェスティバは妹が昔乗っておりました。小型車の楽しさを濃縮させたような車でした。
by pitts (2011-10-03 01:01)
★HIROさん
まあ、ウチは車にお金を掛けられるほどの稼ぎがないってのも
あるんですけどね。
ずっと小型車に乗ってると、時代によって作り込みの方向が変わって
いくのが面白かったりもします。
小型のアルファは代々魅力的なモデルが多いですね。
今のMITOなんかもほれぼれします。
★pittsさん
じゃあ、缶ジュースをエアコンで冷やしたり温めたりできるポケットも
ご存知で(笑)
だいたいバイクが基準になってると、雨がしのげてヒーターが効くだけで
しみじみいいクルマだと思えてくるからフェアじゃないんですけど。。
by YASH (2011-10-03 21:58)
2T-G、4A-G、フェスティバニミワゴン被ってます^^ゞ
当時は「A」のバンパーファンが多かったのですが、僕はMG-Bの面構えが好きでしたbb
「ぱたぱたとキャンバストップを叩く雨音」
これもスンゴク良く判ります^^b
なるほどそうだったんですね~!
by McCoy (2011-10-04 13:00)
★McCoyさん
そうだったんですよ~(笑)
四輪方面はMcCoyさんのモノサシにはかなわないと思うんですが、
2T-G、4A-Gは今思うと中排気量の二輪的でしたね。
MGを手に入れたのはユーノス・ロードスターが出るちょっと前で、
雨漏りやらマイナートラブルが当たり前だったけど楽しかったなぁ…。
何でも便利で快適じゃなくても別にいいんだって事を、
教わったような気がします。
by YASH (2011-10-06 23:56)