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私の義務。 [オートバイ・ライフ]

週末からそろそろ梅雨明けの声も聞かれそうだが、今年はしっかり梅雨らしい梅雨だったこと。

そんな中、降ると分かっているのに走りに行って、雨は雨で悪くはないよみたいな話を書いたけれども、
実はその帰り道、かなりショッキングな状況を目撃することになった。

当日の記事には出さずに、別扱いで書こうと思いつつ遅くなってしまったが、昨日読んだお馴染みさんの
blogと合わせて自らの戒めのために、そして考えるきっかけの一つとして。




その日の夕方、東海北陸道の飛騨清見辺りでは強い雨が降っていた。

まるで夕立のような大粒の雨がカッバを叩き、水煙を巻き上げる周りの四輪もかなりペースを落としている。
曇らない工夫のされたシールドと撥水剤の効き目で、視界はそれほど悪くはなかったが、
この降り方の中を走り続けても良い事はないだろうと、ひるがの高原SAへ退避することにした。

その直前.jpg

しばらく様子を見ていたが、多少波はあるものの雨脚は一向に弱くならない。
時計は午後6時少し前。

このまま雨が弱まるのを待ってから走り出すのも選択肢のひとつだが、止んでくれる保証はどこにもないし、
それにそろそろ暗くなってくる時間だ。
土砂降りか視界の利かない夜の雨かどちらを取るか考え、明るいうちに先へ進むことにして走り出した。

 


本線への合流車線が終わるか終わらないかのうちに、先行していた1BOXが不意に左へハンドルを切り、
急減速する。

何がどうなっているのかわからないまま、一瞬ミラーに目をやってから減速して、同様に左へ回避。
同時に車線の右端になにやら散乱しているのが見え始めた。

やがて目に入ったのは、対向車線を塞ぐようにして止まる、大破した小型のセダンだった。
半ば逆走方向に向かい、めくれ上がったボンネットを覆うように、もうもうと立ち上る水蒸気が雄弁に不吉だ。
そして土砂降りの中、路肩には小さな傘に身を寄せる2人の女性の姿。

そんな光景がほんの2、3秒のうちに視界を流れ、後方へ過ぎ去っていく。
時間は短くても、肝を冷やすには充分過ぎる。

本当に事故直後で警察もまだ到着していない。
ちょうど対面通行箇所だったこともあって後続は進む事ができず、なん十台ものヘッドライトが
事故車を照らしている。
現場はそんなふうに凍りついていた。
かろうじて機能しているのは、こちらの車線の路肩だけだった。



ずらりとならんだ対向車線は早くも渋滞が始まっていた。
その最後尾のドライバーは数百メートル先の現実を、どれくらい後に見たのだろう。
その数百メートル後ろでは、何も知らない観光バスが、渋滞に向かって走って行く。

 

走りながら考える。
SAに入るため減速した車に追突したのか、あるいはSAを出た直後、追い越し車線だと錯覚して
対向車線に向かってしまったのか。
そしてちょうどその時、わずか数分の差でそこに居合わせなかったのに胸を撫で下ろす。
あの日も、私はラッキーだった。


バイクに乗る選択をして以来、大きなケガもなく、他人を傷つけることもなく
その世界を広げて来られたのは、たぶん、こういうラッキーが続いているからだろう。
なんの裏付けもない、気まぐれであてにならない幸運。
そんな事を時々思う。

もちろん運に任せた乗り方などしてはいないつもりだし、いっときの爽快感より、
普段通り家に帰る方を優先させたいと思って乗っている。
私は元来、小心者だ。

五斗蒔PAにて.jpg

そうしてこの日の最後の休憩のように、やれやれ、よく降られたけどやっぱり出てきて良かったぞと、
独りつぶやいて家に帰る。

どんな季節でもどんな時間でも、誰と行ってもソロで何百キロ走ってきても、そうやって家に帰る。
そのためにできるだけの努力をし、お金を使い、想像し、時には止まって待つ。

そういう小心者でい続けるのが、私の義務なのだ。


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コメント 14

なおネィ

先日のコメントは伏線だったのですねぇ。
そんなショッキングなシーンに遭遇されていたとは。

何が災いし何が幸いするかわからないけど、
わかっているのは、バイクに乗ると決めたときに
自分に課した義務を守り続けることなのかも。


by なおネィ (2010-07-14 12:59) 

MORIHANA

オオゴトに巻き込まれなくて、良かったです。
以前も、どこかに書きましたが、バイクはいくら大きくても、
高性能でも、所詮は丸腰。それだけに運が良い、悪いだけでは
防ぎようのないこと、逆に回避できることもあると思います。

これからも、歳なりの体力と判断力(これも、意外に老化が早い)、
運動能力に見合った大きさ、旅程を選んで、足腰の立つ限り
バイクに乗り続けてくださいね(笑 お仲間みんなが入れ歯を
カクカクさせながら「まだまだぁ、若いもんにゃ、負けん!」
なーんていいながら、バイクに跨ってたら、、、面白いでしょうねぇー。

そんな笑撃的な風景を、嗚呼、死ぬまでに見てみたい。
悠々自適なお年頃になったら、皆で蝦夷へ遊びにきてください。
私の老後の愉しみにとっておきます (^m^
by MORIHANA (2010-07-14 15:53) 

harry

結婚してから「ちゃんと生き延びるのも義務」と思うようになったかも。
違反で捕まることも無くなったし、心構えって大事ですねぇ。

↑のお方も楽しみにされてるようなので(笑)、お互いに生き延びて
その時の愛馬で北へ遊びに行きましょか。
髪の毛残ってるといいなぁ。。
by harry (2010-07-14 20:31) 

HIRO

こんにちは。
ショッキングなシーンでしたね。

年期を重ねる事により、積み重ねた経験が、若い頃より小心(慎重)にさせるんだと思います。
自分も、バイクに乗る時に”無事で帰る”事を肝に銘じる様にしています。
by HIRO (2010-07-14 21:30) 

FTドルフィン

百里の道、九十九里をもって半ばとせよ
小心者?
いやいや
正心者ですよ。
by FTドルフィン (2010-07-14 22:05) 

see'z

お久しぶりです。
『いっときの爽快感より、普段通り家に帰る』
高揚しすぎた時こそ冷静になれるよう、頭の中に納めておきます。
2枚目の写真のTDMがショーケースの中の展示品みたいでイイですね。
by see'z (2010-07-15 00:45) 

kobaban

ロングツーとか行くときは、出かける直前の玄関先で、「今回も無事に戻ってくるぞ」って自分に言い聞かせるようにしています。運・不運はありますが、ラッキーの確率を上げる事はできると思います。
by kobaban (2010-07-15 01:24) 

yosi

バイクは無防備な乗り物ですから、巻き込まれたら大変です。
だからこそより慎重に走らなくてはいけないのですね。
ラッキーが長く続くように。

by yosi (2010-07-15 12:50) 

XXAR2

私も小心者です。怖い思いをしたり見たり...
だからこそ、まだバイクに乗れているんだと思います。
by XXAR2 (2010-07-15 14:08) 

シバラク

同意×∞

ワタクシも嫁さんへの最大のお土産は「無事帰宅」ですb
by シバラク (2010-07-15 21:37) 

YASH

★なおネィさん
運・不運で片付けられる事ばかりじゃないものの、
たまたまいろんな事が重なった結果として、今の自分があるんだろうなぁ
なんてね、そんなふうに思うことがあるんですよ。
もちろん自分でそっちに向かうように努めたことも、
反映されてるはずですけどね。

義務なんて表現はバイクにはそぐわないかもしれないけど、
これだけは守るって事、決めておくのは悪い事じゃないですよね。

★MORIHANAさん
そう、そろそろあとどれくらい乗れるかなぁなんて思う事がありますよ。
もう一台くらい大きいのに乗って、次は控えめな存在でいてくれるバイクで、
自分の内面が主役の旅がしたいな、なんてね。
ジジィ、口ばっかりだしーなんて言われそうだから、
ソロが増えるだろうなぁ(笑)

遊びにおいでなんていってくれる人がいるなんて、
そんな幸せなことはないですねぇ。
その日を無事迎えるためにも、生き延びなきゃ。

★harryさん
「のも」とか「かも」って何ですか。
実は独身の頃は、ひっそりと破滅型を望んでいた、とか?(微笑)

私は髪の毛はともかく膝が気になるけど、そういうスパンの長い目標は
これからの人生の禿げみ、じゃなくて励みになるなぁ(笑)
頑張ろ。

★HIROさん
いろんな事を知るにつれて、慎重になるっていうのはありますね。
というか普通はそうなるような気がするんですが、
いろんな事を知っているはずの歳なのに、走り方はエゲツナイって人たちもいますけどね…。
とにかく、趣味のバイクは無事に帰るに尽きます。

★FTドルフィンさん
私はそれほど慎重なタイプではないと思ってるんですが、
自分でそれに気が付いているから余計にそう思うのかもしれません。
武勇伝には興味ないですし、体のどこそこにボルトが何本入ってるなんて
話もまっぴら。
普通で居られればそれに越した事はありません。

by YASH (2010-07-15 22:23) 

YASH

★see'zさん お久しぶりですね。
近頃はあんまり高揚することもなくなっちゃってつまんない、
とか言っちゃダメですね(笑)
冷静に喜んで静かに盛り上がって、淡々と走って帰る、なんて言うと
全然楽しくなさそうだけど、私はそれでいいんですb

★kobabanさん
めっきりロングにも出られなくなったけど、例え通勤の数キロだって
それを意識するかしないかではやっぱり違うような気がしますね。
これからも少しでもラッキーの確率が上げられるように、
お互い気をつけて行きましょう。

★yosiさん
よくもまあ、こんな無防備に剥き出してこんなスピードで動くモノが
禁じられないもんだと、たまに思います。思いません?(笑)
ラッキーが続く保証はどこにもないし、それがアンラッキーに変った事も
事が起こるまでは気が付きませんよね。
できればそうならないように乗り続けたいものです。

★XXAR2さん
近頃は想像できない人が増えたって言うでしょ。
クルマでもなんでもそうですけど、バイクもやっぱりそれが
大切なんでしょうね。

なにが怖いことに繋がるのか、ここから先は行っていいのか。
そんなことを想像しながら探る感覚は、ずっと持ち続けていたいです。

★シバラクさん
そんな標語がありましたね。
どんなお土産より、当たり前に帰ってくるのが待ってる人には一番。
我が家も、そしてきっとどこの家でも同じです。

by YASH (2010-07-15 22:57) 

tak

私もまだ、大きな事故を起こしたことはありません。
立ちゴケが2回と、転倒が1回ありますけど、
まあ、それだけです。
でも、それは、YASHさんのおっしゃるように
単にラッキーが続いているだけなのだと思います。

運・不運は、明確にありますね。
私にも、「あとちょっと、ここを通るのが早かったら、
巻き込まれていたかも。」という経験はあります。
けれども、事故を起こしても、「運が悪かった。」で
すましてしまう人には、その不運が、またやってきます。
なんか、そんな感じがしますね。

by tak (2010-07-17 00:02) 

R1150GS乗り

ご無沙汰しています。
「無事此れ名馬」と思って乗っています。
たまに忘れますが・・・
by R1150GS乗り (2010-07-19 22:44) 

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