宮大工ではないけれど [仕事]
春から、実家が檀家になっているお寺の工事をすることになった。
うちは別に宮大工ではないのだが、今回は本式の社寺建築の仕事ではなく、どらかというと土間コンクリートや左官工事の方が主体で、そられをまとめつつ付随する大工工事も、という内容になるようだ。
何年か前に本堂の建替を大手の専門業者がやったのだが、どうも檀家の年寄り衆にウケが悪かったらしい。それもあってどうせお金を動かすなら檀家内で、ということなのか。
工事にかかるのはまだ先なのだが、まず鐘突堂の天井を先にめくっておいて欲しいというので、昨日行ってきた。
実はここの鐘は戦時中、供出の対象になって軍に持ち去られてしまい、それ以来無くなっていたのだ。それが今回、寄進されるということになったのだが、果たしてずっと負荷無しであった構造に吊り下げて大丈夫なものか、鐘屋さんが確認したいとの事。
山門の二階が鐘突堂。こういう造りって珍しいかも?
子供の頃からお祭りに行ったりして見慣れているはずなのだが、改めて見直すと、なかなか立派なものである。
格天井の板をめくるとこんな風。自分も初めて見た。
ものすごくアバウトに見えるが、ちゃんと加重は四辺・四隅に分散され、最終的に四方の柱にうまく架かるようになっている。
それにしても切断され、強引に広げられた吊り具が無残である。ここに鐘が下がっていたのだ。
欄干の下の切り裂かれたようなのは銅板。元々はぐるりと銅板が貼られていたのだが、それも軍がついでに切り取って行ったそうだ。
繰り返してはならない時代の名残りが、こんなところにあるとは思わなかった。
工事が終わる秋にはすっかりきれいになり、何十年ぶりかに本来の姿を取り戻すだろう。
いろいろと大変そうだが、おもしろそうな仕事でもある。
はじめまして、すごく興味深いお話ですね、切り取られた跡が無残です。
by (2006-02-26 20:28)
悲しい歴史の爪痕が、まだまだ意外な場所に残っているのですね。
荷重計算・・・先達の知恵はすごいですねぇ(^^)
by pitts (2006-02-27 14:55)
まだ戦後は終わっていないのですねー。
それにしても、天井の板をめくってみれば
構造がまるわかりになるのですから、
強度の偽装なんかできるわけないですねー。
(^^;
by kokudoh (2006-02-27 20:21)
>みちあきさん
はじめまして こんばんは。
切り取り方がなりふりかまってないというか、盗賊みたいなやり方で
生々しかったです。
でもここも貼り替える予定ですよ(^^)
> pittsさん
一般の人の目に触れないというのもあったんでしょうけど、
まるっきり当時のままというのもスゴイと思いました。
荷加重計算なんて概念は無くて、まあこんなもんだろ でやってるんだと
思いますが、大したものです。
>takさん
偽装の必要もないでしょうし、当時の人はそんなこと思いもみなかった
でしょうね。
それにしても社寺建築には、こういう四隅の柱だけで持たせてあるものをよく見かけますが、これって構造としては相当無理があるはずなんです。
凝った意匠で重い屋根の横揺れを支える壁や筋交いがないんですから。
そのため柱に、両方向に末広がりの角度を付けて筋交いを兼ねるようにしてあるんですが、こういうのを見ると今の耐震補強って何なのだろうと思ったりもします。
by YASH (2006-02-27 21:56)