以前、春秋と上高地に行ったときはそれほどでもなかったんだけど、
この頃我が家ではどういう訳か、山を歩こうというので盛り上がっている。
しかもアウトドア方面にはほとんど興味がなかった妻の方が、着々と装備を整えつつある。
久しぶりに山道具の店に行ってみると、ウェアもザックも靴もずいぶんと垢抜けた色使いの物が多くなっていて、
見るだけでも楽しいようだ。
そして見るだけではなくちゃんとまじめに試着して、ちょっと前なら履くことはないだろうと思っていた
トレッキングシューズも手に入れてしまった。
装備が整ってくると実地で使いたいのはどんな趣味でも同じ。
とりあえず手軽に行けて涼しい所というリクエストから、ビーナスラインの八島湿原の辺りを考えてみた。
湿原の周りの木道はサンダル履きでも歩けるが、そこから周りの山に繋がるルートはちゃんと登山道ぽくて、
軽いトレッキングにはうってつけの様子。
まずはここから始めてみることにした。
日曜の早朝、諏訪のICを降りて、以前バイクの仲間と走った県道から一気に霧が峰へ。
低い雲が次々に流れては過ぎていく、曇りの朝。
途中の池のくるみからは、朝もやの彼方の富士山が一瞬、姿を見せてくれた。
駐車場で身支度を整えて歩き出す。
長袖シャツだけではさすがに寒いくらいだが、夜明け前から雲が多かったせいか、
思ったほどの冷え込みはなかった。
それでも時々湿った冷たい風が吹くので、ウインドブレーカーを着て出発。
小さなトンネルをくぐった先に見えるのが八島湿原。
ここはその中の八島ヶ池。
こんなにあっけなく来られるのに、実は初めて見た。
ほんの100メートル程しか離れていないビーナスラインは、何度走ったか覚えていないほどだと言うのに。
バイクやクルマで「行った」というのは、実はほんの表面をかすめているだけ、なのかもしれない。
山に囲まれているのに平坦で明るい風景というのは、あまり馴染みがないので妙に新鮮に感じてしまう。
まだ朝の内ということもあって、辺りの木道にも人影はまばら。
息が白くなる頃に来たら、かなり素敵そうだ。
湿原一周ではあっという間に終わってしまうし、せっかくの山靴も物足りないだろうからもっと先へ。
八島湿原の西の端からもっと奥にある別の湿原を経由して、草原の中の高台へ登って二つの頂を結んだ後、
一気に下って再び八島湿原に戻ってくるというルートを取ることにした。
木道が整備されている所もあるが、クマ笹の茂みの中の踏み跡になったりガレ場の中の溝になったりと、
コースとして認識してなかったらまず踏み込むことはなかったような「道」を進む。
蝶々深山という名の高台へ登る途中に振り返ると、こんな風景が広がる。
一番低い辺りから右へ行くと車山湿原で、私たちはそこから来たのだが
延々と伸びる先は車山高原。
バイクや車ならどれくらいで着くか、考える程の距離とも思えないのに、ここでは雲の彼方だ。
この辺りはどういう訳か山に木立がほとんどなくて、彼方まで広がる草原がちょっと異国風。
そして国内では少ない黒曜石が産出したせいか、近くには遺跡があってびっくり。
知らなかった事ばっかりだ。
地図上では半日コースとはいうものの、行く先が視界の先に消えているのを見ると、
軽くボーゼンとしたりして…。
二つ目の頂を下った先で、木陰を見つけておにぎりのランチに。
昼過ぎ、ここまで降りてくるとまた残暑の中に戻ったような気がしてくる。
いつのまにか晴れ間が広がっていて、すっかり夏に戻ったような陽射し。
周りの風景が朝とはずいぶん違って見える。
八島ヶ池も空と雲を映して、すっかり明るい印象に変っていた。
そしてバス旅行の観光客が、木道のあちこちで記念撮影中。
ビーナスラインを走って行くだけではこの木道には気が付かないし、木道を散策するだけでは
草原の中を延々と延びる道にも気付かない。
ツーリングではすっかりお馴染みの道を少し外れた先には、こんな風景が広がっていたとは。
それに気付いただけでも収穫だったかな。
***
という訳でこのブログに、新しいカテゴリーまで作ってしまった我が家のトレッキング志向。
いつまで続くのか、どこまで行くのかはトレックの神様だけが知っている。
とりあえずこの秋にはもう少しどこか行きたいけど、バイクにも乗りたいしなぁ…。
二兎を追う者は一兎を得ず、とか言っちゃダメ。