ちょっとした改造や増築は別として、今、家を建てようと思っても
大工に直接依頼する人は少ない。
電話一本で小奇麗な格好の営業マンが、小洒落たプランニングを持ってすっ飛んでくる時代だ。
そりゃそうだ。
でもごく稀に、あんたにやってほしいという仕事が来ることもある。
ちょっとした改造や増築は別として、今、家を建てようと思っても
大工に直接依頼する人は少ない。
電話一本で小奇麗な格好の営業マンが、小洒落たプランニングを持ってすっ飛んでくる時代だ。
そりゃそうだ。
でもごく稀に、あんたにやってほしいという仕事が来ることもある。
ちょくちょく出入りさせてもらっていて、そのうち建替える事にでもなれば頼むね、などと
言ってもらってはいたものの、このご時勢に本当にそうなるとは思っていなかったのだが。
元々は先代が本家から分家した時に、曳家と言って他所から建ったままそこへ移設してきたものだから、
相当古い家だった。
それを現代の耐震補強をして今風の間取りに、という話から始まったのだが、結局建替えという方向に
話が決まったのは、5月の連休頃だったか。
それからプランニング、設計、法的な申請。
他の現場仕事の合間を縫って打合せと折衝の毎日が続き、いよいよ着工。
まずは解体から。
元々予算が少ないものだから、各業者にも無理を聞いてもらう代わりに、手伝えることは手伝って予算を浮かせる。
お互い持ちつ持たれつ、こういうときに横の繋がりがものを言う。
解体するときはいつも思うが、たとえ築後どれだけ経っていようと梁に残る番付や墨には、
手掛けた大工の息遣いが残るような気がする。
自分も同様の事をしてきているから、見れば手間とそれに掛かる時間が肌で感じられるのだ。
でも、壊すときは一瞬。
私がやった仕事も、いずれはこうして消えていくんだろう。
壁を塗った左官も、建具屋も瓦屋も畳屋もみんなそう。
そういうことをひっくるめて回っていくのが、私達の仕事なのだ。
今年の梅雨は長くて、基礎工事の日程には気を揉んだけど、なんとかうまく収めてくれた。
みんなに感謝。
***
で、途中は端折ってしまうけど、年内の引越し期間をたっぷり残す頃に竣工。
別にのんびり構えていたわけではないのだが、忙しいときに限ってあっちこっちから
ちょっと頼めんかとお呼びがかかる。
思ったより長くかかってしまったが、下請けと違って仕事をせっつかれる事もなく、
納得いく仕事ができたのは良かった。
その分経費が掛かってしまうので、ビジネスとしてはさっさと仕上げて、
他の仕事を取るべきなんだけれども…。
でもまぁ、お施主さんは満足してくれたみたいだし、こちらもおかげでなんとか年が越せる。
これからもご贔屓に。
***
と、いう今年だったのだが、来年はトホホな出だしで始まりそう。
またくたびれもうけみたいな日々が始まるなぁ…。
いい仕事、カモン!