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どうしたかというと。 [仕事]

窓から外を見たとしよう。

すると向かいのアパートのベランダに、壁伝いに男が入ってきたのを見つけてしまった。
サッシの戸をガタガタやって開けようとしている…。

あそこ.JPG



     -- どうする?---------
        ⇒ たたかう              
        つうほう 
         みないふり         
         にげる
   -------------------     

 

 

 

 

というのは先日の朝の出来事。

大規模リフォームの終盤で、カウンターなどを塗りに来た顔見知りの塗装屋君が、
仕事にかかったと思ったら声を潜めて私を呼ぶ。

 「ちょっとおかしいっすよ。あいつ、外から伝ってベランダ入ってなんかやってるんすよ。」

玄関ホールの小窓の外。
指差す方を見ると、なにやら肌の浅黒い外国人風の若者が、履き出し窓から中を覗き込んで
サッシを開けようとしている。
が、鍵が掛かっているようで開かないらしい。

 どこから来たの、あれ。

 「や、わかんないけど見たときは手すり乗り越えて入ってくとこだったんす。
 なんかもう、思いっきり不審じゃないすか。」

屋根から下りてきたんじゃないとすると、死角になっている西側からか。
そちらにもベランダがあるようで、グリーンに塗られた手すりがちらりと見える。
でももあそこって3階だぞ?

中に入れないとなったベランダ男(仮)はスマホを取り出して、どこかへ電話をし始めた。
うーむ、確かに絵に描いたような不審者じゃん…。

などとやっていると、我々の視線に気付いたのか目が合ってしまった。
そこでなぜか白い歯がきらりん。
肌が黒いから、白さがよけい目立つ。

 「なんなんすか、笑ってますよあいつ!
 どうしたらいいんすか、警察呼んだ方がよくないすか!?」

と、塗装屋君は言うが、良からぬ事をしに来たにしては、
妙にのんきな空気を漂わせているような気もする。
空き巣や誰かを狙いに来たとして、中にすんなり入れないとなったら
外に向かって手すりにもたれてだらだら電話したりするだろうか。
しかも目撃者に笑ったぞ?

 あれじゃないの、あそこが寮になってて鍵失くしちゃったから窓開いてないかと、
 頑張って登ってきたんじゃないか?

と言ってはみたものの、すぐ気が変わった。

 いや、そうかもしれんが、あの部屋に夜勤明けの女の子が寝てない保証もないな。

という訳で110番。

 

***

 

3分ほどでサイレンが近くなったと思ったら、お巡りさんが二人現れた。
まだ電話をしているベランダ男(仮)を見上げながら、ちょっとー、そこアナタの部屋ー? などと
やり出したので、あとはプロに任せる事にする。
成り行きを見ていたいのは山々だが、今日明日でこの現場は終わる事になっているのに、
本当に終わるのかかなり疑問だったので、仕事に戻ったのだった。 

しばらくすると塗装屋君は仕事を終えたのだけれど、車の止めてあるコインパーキングへ戻るには
お巡りさんの横を通らねばならない。

 「あそこ横切って行くんすか…。」

などと言うので窓の外を見ると、お巡りさんは仲間を呼んだらしい。
制服以外にも黒いパンツスーツの女性や、どう見ても運動部の顧問の先生みたいな
ジャージ姿も混じっていたのは刑事さんだったのか。
とにかく6~7人に増えた警察側と、通りがかった近隣住人で、なにやら物々しい雰囲気になっていた。

なんかあったんすかーとか、しらばっくれて通っても… と言いかけてちょっと待てよと。
後で通報者の自分が何か聞かれても、最初の状況を見ていたのは塗装屋君なのだ。
第一発見者からの情報が求められるのは必然かもしれない。
君がいるうちに事情を話しといた方が、後で面倒にならないだろうねと、
二人で出て行って事情を話しておく事に。

すると警察側からも状況を教えてくれて、やはりベランダ男(仮)は鍵を失くしたその部屋の住人だそうで、
事件性は低いということだった。
でも最初の状況が状況なので、通報頂いて正解ですとのこと。
なかなか進展しないのは、彼が日本語をまったく話せないかららしい。

その時点では、大家さんに鍵の手配をお願いして、みたいな話だったが、
2時間後くらいにヘルメットとオレンジ色のつなぎの消防隊員が何人か来たということは、
結局鍵の手配はつかなかったらしい。
もしかしたらはしご車が来たのかもしれないが、そんな頃はすっかり仕事に戻っていて
見てなかった。

鍵は無くすわ、警察や消防も巻き込んだ大騒ぎになるわで、
ベランダ男君には散々の一日だったかもしれないが、
君が来ている国はそういう所だからそこそこ治安もいいんだよと、実感してくれただろうか。

 

***



ところで塗装屋君とも話していたけれども、こういうときに即座に通報したり行動できないのも
いわゆる平和ボケなんだろうな。

今回は傍目には笑い話で済んだけど、一刻を争う場合にどれだけ早く判断して行動に移せるのやら。
近頃は通報より先に、動画で撮る方を優先させるようなご時勢らしいが、
そういう傍観者にだけはなるまいと思ったのだった。

野次馬になるのは、やる事やってからです。

そろそろ終わり.JPG

 

 


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コメント 4

harry

>野次馬になるのは、やる事やってからです。
うん、そうですよね。

目の前で事故が、なんていう時も、まず最初に何をすべきなのか
ちゃんと判断できるようにしたいと思ってますけど
最近ニュースを見ていてふと思ったのは
通り魔的なものと現実に鉢合わせてしまった時に
自分はちゃんと対応できるかな...って。
事故と一緒で、日頃から「こんなことも起こりえる」と
想像を逞しくしてないと、いざという時に固まっちゃいそうです。

いよいよ夏ですな。体調にも気を付けて。
by harry (2016-07-02 07:44) 

YASH

★harryさん
交通事故もそうですよね。
去年はどういうものか自分の前の車に、
横から来た車が突っ込むのに2回居合わせて肝を冷やしましたが、
通り魔的なのの場合は自分でもはちょっと想像がつかないな…。
でも人助けになるようなことはできないかもしれないけど、
事件に居合わせた市民として、最低限の事くらいは
自分の判断でできるようにしたいと思います。

これから最低盆明けまでツライ季節の始まりですが、
なんとか乗り越えないと秋も来ないし。
お互い気をつけましょう。

by YASH (2016-07-02 23:12) 

FTドルフィン

僕はすぐ通報しちゃうなぁ

実は目の前で人が倒れたり車がぶつかったり
鉄道でよくあるあれも目の前で見てますし
至近距離で事が起こる事が多いんです
でも、僕自身が人助けをしたり
事を解決したりした事はないです
なぜかというと・・・
やっぱり固まりますw
こういう事って訓練しないと
ダメなんじゃないかなって思います
人生半世紀余り、何度も体験しても
やっぱり固まります。。。
要は適応力がないってことですね・・・僕、、、

by FTドルフィン (2016-07-03 23:55) 

YASH

★FTドルフィンさん
>鉄道でよくあるあれ
私はさすがにないですけど、あれってアレですよね… 
ひえーっ。

いやー、適応力の問題じゃないと思いますよ。
車はぶつかる人は倒れるを、日常で扱うような
仕事に就いているならともかく、何度か目にするだけで
適応しちゃうのは、それはそれで問題があるような。

ただ、固まったとしてもその後で通報するとか、
AEDが必要なら取りに行くとか、そういう行動ができればな、と思ったのです。
それで誰かが助かったかどうかというのは、結果論のような気がしますよ。

by YASH (2016-07-06 22:00) 

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