その日の朝は、東海北陸道を北へ向かって走っていた。
郡上八幡を越えた辺りからぐんと冷え込みが増して、
まだ寒さに慣れていない体には冬のように感じる。
念のためにダウンのインナーを着込んで正解だった。
この先の白鳥、高鷲、ひるがのはスキー場が連なるエリアで、
さらに寒くなるのが予想されるが、目的地はその先の先。
恒例となった11月のツーリングは、今回は能登へ向かった。
その日の朝は、東海北陸道を北へ向かって走っていた。
郡上八幡を越えた辺りからぐんと冷え込みが増して、
まだ寒さに慣れていない体には冬のように感じる。
念のためにダウンのインナーを着込んで正解だった。
この先の白鳥、高鷲、ひるがのはスキー場が連なるエリアで、
さらに寒くなるのが予想されるが、目的地はその先の先。
恒例となった11月のツーリングは、今回は能登へ向かった。
あらかじめ塩尻で合流し、高山経由でやって来る
ラスカルさん、harryさんと待ち合わせたのは飛騨河合PA。
平日の東海北陸道は思ったより順調に流れ、ちょっと早めに到着。
少し待ってほぼ定刻通りに3台が揃った。
安房峠は4℃だったそうで、寒さに強いharryさんもさすがに堪えたそうだが、
陽射しがあるので心強い。
日中はけっこう暖かいかもね、なんて話をしてから走り出した。
小矢部砺波Jctを越えて能越道へ。
奥飛騨の山間部を抜けるとどんどん暖かくなってきて、
高岡インターを降りる頃には寒冷地仕様になっている装備では汗ばむほど。
体感的には名古屋辺りと変わらなくなったので、ウェアの調節をして再出発。
ここから県道29で峠を越えて、半島の西側へ出る。
色付きかけた木々を眺めながら、見知らぬ山道を行くのは気持ちがいい。
昼はせっかく能登まで来たんだから、いつもみたいに蕎麦じゃない方がいいね、と話していたので、
目についた回転寿司に入ってみた。
住んでいる辺りではあまり聞かないネタもあったりして、
そんなところでも旅先らしさを感じる。
こういう食事はソロよりも、仲間がいてこそ。
ほどよい満腹感の後は、柴垣海岸という小さな浜辺に立ち寄ってみた。
ちなみに自分の母親の旧姓も柴垣という。
ここに来た理由はただそれだけで、別に家族と縁があるわけじゃないのは
あらかじめ分かっている。
海を眺めるだけなら、観光バスが居並ぶ千里浜よりも、
海風の音と潮騒だけが聞こえるこんな浜辺の方がいい。
海岸に沿ったり離れたりを繰り返しながら、半島を北へ進み、
輪島の手前でR249から県道38へ入った。
海辺まで下ると背後の山に午後の陽射しは隠れて、早くも日暮れ間近のよう。
北に向いたここの海は、色も今までとは違って、どこか荒涼とした色合いに見える。
その先の西保海岸付近の家並みは、海からの強い風を防ぐための垣根が作られていて、
独特の景観が広がっていた。
仲間と行くオートバイの旅で、ここに行きたい、あれが見たい、というのは今までないのだけれど、
今回はこの風景を見るためのルートを取らせてもらった。
私がここへ来たかったのだ。
harryさんとラスカルさんはそういうのはあまりないようで、いつものように淡々とした様子。
ここで少しだけ自由行動にして、輪島の手前で落ち合うことにする。
輪島の街を抜けて海岸沿いをしばらく走り、ミラーの中の夕日が
岬の向こうに隠れて薄暗くなってきた頃、宿のある曽々木海岸に到着。
前の浜辺で、かろうじて夕日の名残が残る空を眺めてから、宿に入った。
宿はペンションとあるものの、どちらかといえば民宿のような雰囲気でくつろげた。
ありがたいことに、オートバイは納屋のような建物の中へ入れさせてもらえたし、
食事もとても良かった。
もう一度能登へ行くとしても、宿はここが最有力候補になりそうだ。
ちょっと苦しいくらい海の幸を堪能した後、部屋であれこれ話すうちに心地良い眠気が。
夜半、かすかに波の音が聞こえるような気がしていたのは、夢だったのか、本当だったのか。
***
翌朝目覚めたときは窓ガラスが曇っていて、なんだかぼんやりした曇り空に思えたけれど、
食事を済ませて外に出てみると、明るい青空が広がっていた。素敵。
宿のおかみさんに納屋を開けてもらって準備を整え、ついでにタンクバッグに
いつも入れているフクピカで車体を軽く拭いておく。
これは別の仲間がやっているのを見て覚えた事だが、こうして出先でも汚れを落しておくと、
帰ってからの洗車がとても簡単。
ついでに道中の写真写りもいいので、すっかり習慣になってしまった。
持つべきものは、マメな仲間なのだ。
それにしてもガレージとしては理想的な広さだこと。
憧れるね。
さて今回は帰りの行程を考えて、先端の禄剛崎方面へ行くのは見送る事にした。
曽々木から半島を横断する県道6号で宇出津へ出て、穴水から能登島へ渡りつつ南下する。
七尾の巨大な道の駅で昼食と買い物をしたあとは、そろそろ帰途へ。
途中ナビにもない新しいインターから能越道に乗ったはいいが、
来た方向へしか行けなくて無駄に走ったりしながらも、
氷見北からは能越道、東海北陸道であっという間に再び奥飛騨の山あいへ。
低くなった午後の太陽は山の中腹より上を照らすだけで、飛騨白川の集落もPAも、
すっかり晩秋の冷気が降り始めていた。
前日とは逆に冬支度を整えながら、3人では最後の休憩。
関東へ帰るラスカルさんはこの先の清見インターから中部縦貫道で高山へ降り、
R361の木曽街道-権兵衛トンネルを経由して伊那から中央道へ乗るという。
harryさんは途中まで付き合って塩尻へ戻るとのこと。
私はこのまま東海北陸道を下って名神に入ればあとは大した距離じゃない。
それに比べればラスカルさんは、ここからもう一つの旅のようだ。
気をつけて。
じゃあ、また来年。
そう言って別れ、いつものようにそれぞれの方向へ。
次はもっと東寄りかな。
そんな事を考えながら走る独りの帰り道も、決して退屈な道ではないのだ。
***
さてさて。
今回は、自分が言いだしっぺなのもあって先導も自分だったのだけれど、
ナビの設定ミスや勘違いで全然スマートな先導じゃなかったのが悔やまれる。
能登島でもせっかくだから海岸線を行くつもりだったのに、結果的に山手のルートになってしまって
かなり残念無念…。
あと、なぜか今回視野が狭かった気がする。
好んで人を引っ張るタイプでもないからいいんだけど、
やっぱり基本的には自分はソロだなあというのを再確認した次第。
こんな私で良かったら、とだけ今は言っておきましょう。