年頭、毎月きちんとオートバイに乗って出掛ける 、なんて言ったのはどこのどいつだ。
夏の終わりから毎日、転がる石のように現場と家を往復しているうちに、気が付くともう11月になっていた。
なんてことだ。
このまま転がり続けていたら、どんどん自分も自分の持っている世界も、
欠けて磨り減って小さくなってしまう。
かどうかはともかく、そんな中で強引に立ち止まってみた2日間はこうだった。
年頭、毎月きちんとオートバイに乗って出掛ける 、なんて言ったのはどこのどいつだ。
夏の終わりから毎日、転がる石のように現場と家を往復しているうちに、気が付くともう11月になっていた。
なんてことだ。
このまま転がり続けていたら、どんどん自分も自分の持っている世界も、
欠けて磨り減って小さくなってしまう。
かどうかはともかく、そんな中で強引に立ち止まってみた2日間はこうだった。
先週の水・木は仕事を離れて、いつものメンバーの11月の集まり。
それは少し前から予定に入れてあった。
ところが肩凝りから来ているのか秋の花粉のせいなのか、このところ頭痛が続いていた。
そこへ加えて風邪を引いてしまい、なにが原因なのか、たぶん全部なんだと思うがあまり体調の優れない日が続く。
それでも前日には薬が効いたのと、脳からここ一発のナニカが出たらしく、
ひさしぶりにすっきりした気分で朝を迎えた。
うん、大丈夫そうだ。
そうして走り出したのは朝6時過ぎ。
去年のような暖かさはないものの、高速を走り続けていてもそれほど寒さは感じない。
ひんやりと澄んだ空気と明るい陽射しの、まさしく我々のためのようなバイク日和。
今回は長野道・梓川SAでharryさんと落ち合った後、上信越道・松代PAでラスカルさんと合流した。
このときはばらばらと雨が降り出したが、見上げた雲の流れは けっこう早い。
雨宿りしているとじきに明るくなって、気分よく出発。
信州中野で高速を降りる頃にはすっかり秋晴れに戻って、R292からR117を北へ。
道の駅でバイクを降りると、晩秋の装備では暑いくらいだ。
賑やかさの中にもにのんびりした雰囲気が漂うのは平日のせいか。
昼はへぎ蕎麦を食べようとそのまま北上して新潟は十日町へ。
6年ほど前、やはりこの時期のツーリングでは北信から上越へ出たのだが、
この辺りへ来るのは初めて。
鋼板葺きの屋根の棟が独特の意匠で、そういうところも地方色が感じられて面白い。
ラスカルさんの知っている店は定休日で、それならとはす向かいにある店に行ってみたら
こちらも臨時休業(笑)
あらら、嫌われちゃったね。
そこでもう少し足を伸ばして駅近くの商店街の、老舗のような店に行ってみる事に。
へぎ蕎麦の「へぎ」ってなにかと思ったら、こういう木製の器をそう呼ぶんだそうだ。
つなぎには海草が使われていて、蕎麦なのにつるつるした食感が新鮮。
それを3人前に、きのこの天ぷらと卵焼きを。
蕎麦も天ぷらも良かったが、ふわりと焼かれた卵に出汁の効いたあんがよく合って、
ここの卵焼きはうまかったな。
食事を済ませて店を出ると、まさかの本降りの雨。
それでも空を見上げながら少し待っていると、じきに明るくなってきた。
なんだか知らないけど調子いいねと走り出す。
その後は少し戻ってR405から秋山郷へ。
この辺りも少し前まで雨だったようで、路面も周りの木々もしっとりした感じ。
盛りはやや過ぎていたようだが、それでも渓谷沿いの紅葉が見事だった。
谷を上りながらいくつかの集落を抜けたあたりで、最初停まった場所で落ち合うことにして解散。
こういう自由行動が、ごく自然にできるのもこのメンバーのいいところだ。
自分はさらに少し上った辺りで見つけた分岐に入り込んでみた。
そこは谷沿いのタイトターンが続く道とは、少し雰囲気の違う景色が広がっていた。
こんなところで木々の作る淡い輪郭のモザイク模様をぼんやりと眺めていると、
現場で仕事に追われる毎日が、なんだか人事のように思えてくる。
それはまさしく自分の毎日なんだけれども、そんなふうに考える時もたまには必要なのだ。きっと。
木島平のどん詰まりの、馬曲温泉に着いたのはとっぷりと日が落ちた頃。
どちらかといえば観光客より、主に地元の人達が訪れるような雰囲気で、
自炊の宿の客も、我々だけだった。
部屋に落ち着くと、私とラスカルさんはたいてい風呂に行くんだけれど、
harryさんは一眠りするのがいつものパターン。
後で聞いたら自分たちより3時間も余分に寝ているのに(笑)
自分が風呂から戻り、harryさんがもそもそと起き出す頃、
ラスカルさんが作る夕食が出来上がった。
今回は鍋。
食材はたいてい自宅から用意してくる場合が多く、それに途中の道の駅やスーパーで求めた物が加わる。
こういうスタイルの旅が出来るのも、プランを立てて準備をし、
料理を振舞うのも含めて楽しんでしまえる仲間が居てこそだと思う。
自分はこのメンバーといる時はほとんど任せきり。
こういうことは持ち回りなんて野暮な事は言わず、好きな者が自発的な動いた方が
うまくいくんじゃないか、と思う。
そして楽しかった、おいしかったよ、ありがとう、と素直に言う。
都合よく考え過ぎかな。
***
翌朝、目を覚ましたのは6時過ぎ。
なんとなく揃って起き出して、風呂に行こうかと外を覗いたら雨。
そういえば夜半、水の音が聞こえていたのはてっきり近くの沢音だと思い込んでいたが、
しっかり雨が降っていたらしい。
前の晩は星空だったのに。
けれども傘を借りて外に出てみると、山の向こうの空はもう明るくなっていた。
出発までには止んでいそうだ。
温泉の建物まで少し歩いて、そのまま露天風呂へ。
木島平を見下ろすような展望が開けていて、とても開放的なのはいいんだが、
夜の雨が入ったせいか夕べと比べるとかなりぬるくなっていた。
いくら浸かっていても温まる気がしないので、一旦出て内湯へ入り直すことにする。
こちらはしっかりお湯の熱さが感じられて、さっきの分までしっかり温まりそう。
ところがそれが裏目に出たのか一気に体温が上がったようで、ちょっとのぼせ気味になってしまった。
脱衣場で休んでいると、起きてから感じていた軽い頭痛が少しひどくなってきた。
部屋に戻って休んでいても収まるどころか、妙に体が重い。
おまけに部屋の中にいてフリースを着ているのだから寒い訳はないはずなのに、
体の中から寒さを感じる。
どうやら、風邪をぶり返したらしい。
夕べの鍋の出汁で作ってくれたおじやを少しだけ食べて薬を飲んだが、
そんなにすぐ効くとも思えない。
色々考えて、今回は宿を出たら自分は最寄のインターから帰る事にした。
パッキングし直して外に出ると、青空が広がりかけていた。
天気が回復するのももちろん、せっかくの機会なのにリタイヤするのは残念だが、
無理を押してもいい事はないだろうし、仲間に迷惑をかけないとも限らない。
去年撮れなかった三人揃っての記念写真を撮って、そのままインターへ。
インター手前で短く別れを告げて、昨日降りた信州中野から上信越道へ。
乗って間もない頃は普段と違い、目から入る情報の処理が追いつかない有様。
これで雨が続いていたらかなり辛かっただろう。
長野道へ入り、梓川SAで暖かいうどんの昼食を。
その後、陽だまりのベンチで30分ほど休んでいただろうか。
気が付いたらずいぶん楽になっていた。
今頃二人はどの辺りを走っているだろう、昼は何を食べたのかな、なんて思いながら、
しばらく我慢していれば山道を走り続けられたかも、なんて一瞬思ったりもした。
でも、今回はこれでよかったのだ。
バイクは心や気持ちが運転に出やすい乗り物。
体調が優れないのを我慢して乗っても、ろくな事にならないのは充分すぎるくらい分かっている。
今日の続きはきっとまた、どこか気分のいい道に繋がっているはずだ。
そう考える事にして、からりと晴れた明るい高速を淡々と走って家路に着いた。