ついでがあったので、「まあ、やっとくか」と受けてみた健康診断だったのに、難しい顔のドクター二人を前にした私がいる。
「とてもよくない結果が出ています。」
なんていきなり言われてもね、困るんだけどな。
ついでがあったので、「まあ、やっとくか」と受けてみた健康診断だったのに、難しい顔のドクター二人を前にした私がいる。
「とてもよくない結果が出ています。」
なんていきなり言われてもね、困るんだけどな。
耳慣れない病名とそれについての説明が始まる。精密検査の必要があるけれど、相当進行しているらしい。
普通なら仕事なんてしていられる状態ではないって? そんなに頑張り屋さんじゃないはずなんだけど。
「バランス感覚がおかしいとは思わなかった?」
うーん…。疲れてるとこんなもんかな、くらいにしか。
これ、分かります? と、ドクターの一人が持っていたペンを前に掲げ、指先でゆっくりと回す。
それを伝えると、「ふむ、視力にはまだか…。」 なんて言いながらカルテに書き込んでいる。
まだ、何だよ?
今度の風邪はしつこいなと思っていたが、違っていたのか。
初期症状は風邪に似ているので、余計に発見が遅れるんだそうだ。
とにかく精密検査をしますが、と机の上で指を組んだドクターと向き合う。
埃っぽい環境は厳禁、空気の良いところで安静にしてください。長くかかることになると思いますがあせらないようにね。じゃあ、検査の予約ですけど…。
だんだんそんな声も耳に入らなくなってきた。
困ったな、おれが現場で埃にまみれてないとうちには1円も入ってこないってのに。
治療費、どうしよう…。
だいたいそんなサナトリウムみたいな所がどこにあるんだよ、退屈そうだなぁ。
でも病気なんだし…。
困ったな。
***
くるりと意識がこちら側へ戻れば布団の中。
枕元の時計は午前5時25分。目覚め方としては最悪の部類だ。
ありがちな支離滅裂さは感じられず、妙にリアルな夢だったこと。
ベロキラプトルに追っかけられて汗びっしょり、の目覚めの方がこういうシリアスさよりは全然マシだよ、まったく。
空気のきれいなところで安静に、か。
現実逃避の願望だな、きっと。