縁あってここで繋がり、いろんなところへ出かけてきた友人達とは、
コロナ禍からしばらく会っていなかった。
恒例だった秋のツーリングもそろそろお開きか、とも思ったが、
このままなんとなく途切れてしまうのはちょっともったいない。
そう考えて久しぶりに連絡を取ってみた。
冬が来る前に少しでも一緒に走り、お互いの顔を見て話せるなら、と。
雨上がりの強い風は収まり、当日の朝は穏やかな晴れの予報。
その代わり山間部はけっこうな冷え込みで、途中から電熱インナーとオーバーパンツを着込み、
中央道を北へ向かった。
自分とは対照的にちょっとそこまで、みたいな装いのharryさんとは諏訪湖PAで合流。
しばらく会わないうちに乗り換えたscramblerは、あちこちが好みに合うよう
手が掛けられているわりにはノーマル然としていて、ありがちなカスタム感を匂わせない。
そんな雰囲気がharryさんにとてもよく合っていた。
ラスカルさんとは富士見のローカルなパン屋で落ち合う事になっていたので、
そこかしこに見られる紅葉を眺めながら下道を進んだ。
八ヶ岳が間近に見えるこの辺りは、名古屋近郊と比べるとひと月くらいは季節が先行している様子。
けれどもこの日は空気は冷たいのに、陽射しはしっかりと暖かく、絶妙なオートバイ日和になってきた。
先に着いたのでお土産代わりのパンをいくつか買って、駐車場の木漏れ日に見とれながら話すうちに
ラスカルさんも到着。
今回はCL400で登場。
見るたびに思うが、harryさんも同じCLに乗っているのに、印象がまったく違って見えるのが不思議。
良し悪しの問題ではなくて、どちらも持ち主の人となりが出ているのが興味深い。
R1200RTも似合っていたけれど、そういう意味ではラスカルさんらしさがより表れるCLの方が、私は好きだな。
昼食はharryさんが教えてくれた、小淵沢から東に向かった山あいの店へ。
メキシコ風のアメリカ料理、あるいはメキシコと近縁のテキサスの料理をTex-Mexというのだそうで、
そんなメニューを扱う店だった。
ちょうど昼時だったので店内は満席なのだけれど、我々にはテラス席の方が寛げそうなのですんなりと着席。
私はブリトーのランチにガンボというスープを付けて頼んでみた。
チキン等の具材とチーズを生地で包んで焼いたブリトーは、見た目よりボリュームがあり、
異文化を感じる香辛料の香りのガンボともよく合って、食べ応えのあるランチだった。
食後はどこか紅葉でも眺められる場所があれば、と走り出し、最寄り検索で見つけた
小さな公園に向かうことに。
ここは当てずっぽうで来てみたわりに、オートバイが横付けできて陽射しが暖かく、
ベンチも東屋もトイレも完備。
紅葉している木立ちこそないものの、代わりに八ヶ岳の眺望が抜群という、
今日の我々にはぴったりの好立地だった。
そこでオートバイと風景を眺めながら、いろんな話をした。
暮らしの事、仕事の事、親の事、オートバイやウェアの事、今とこれからの自分の事、等々。
普段はお互い数百キロ離れ、まったく異なる日常を暮らしているのに、
たまに会えば、そんな事をふと話し合える相手がいるというのは、
不思議であり面白いものだな。
ゆっくりと影を伸ばしていく陽射しの下で、そんな事をしみじみ思った。
日が陰る前には動き出そう。
そう話していた通り、夕方にはまだ早いうちに長坂ICから中央道に乗り、ラスカルさんとはここでお別れ。
また来年、どこかで。
【harryさん撮影】
岡谷JCTで別れる前に、諏訪湖SAに寄ってみた。
ここまで来るとすっかり陽射しは陰り、同時に山の冷気が押し寄せてくるようだ。
再び防寒の身支度を整え、暖かくなった頃にまた、と手を振り合ってそれぞれの方角へ走り出した。
***
TDMが私の元に来てから20年。
20回目の秋は、こんなふうに過ぎて行った。
明日、車検から戻ってくるTDMと、あと何度秋を過ごせるだろう？