苫小牧に着いたのは6/27の昼前。
前日の仙台あたりから快晴にも関わらず甲板に出ると風がひんやりして、
さすが北国と思ったけれども、上陸して内陸に向かうにつれジャケットのベンチレーションを
閉じたままでは暑いくらいになってきた。
安平-占冠経由で、富良野の東の端へ。
咲き始めているはずのラベンダーには目もくれず向かったのはベベルイ周辺。
こんな風景が広がって、セローなら思わず丘を越えてみたくなりそうな素敵な小径が
あちこちに見えてくる。
でもこういう道は農地の私道なので、眺めるだけにしておくのがツーリストの心得。
それでも場所を変えれば、一日中でも楽しめそうな所だった。
ここは上富良野だったか美馬牛だったか。
幹線を外れたこんな道端でぼんやり景色を眺める、というのが
今回してみたかった事のひとつ。
なにがいいって、車やバイクがまったく通らないのがいい(笑)
この後で美瑛にも行ったのだけれど、特に人が足を止めるものがないような
上富良野や美馬牛の静かな丘の方が、なんだか性に合うような気がした。
おそらく有名になる前の美瑛も、こんな雰囲気だったのかもしれない。
留萌からは日本海の海岸沿いに国道232を北へ。
以前この道を走った頃と違って、道の駅がそこかしこにできていた。
ずいぶん便利になったのに軽く驚きながらも、うねる路面と道路端を指す矢羽根の連なりは
記憶の中の道と同じで、どこか懐かしさも感じながら走ったのだった。
天塩から北へ海沿いを行くのは道道106、雨の朝。
道路から見る限り、人の生活感がまったく感じられない道。
晴れていればずいぶんと違った印象だったろうが、初夏だというのに
冷気さえ感じる雨の中では辺境感満点。
礼文島は今回初めて。
ここは島の東側の海岸線なのだけれど、こういう道端にいきなり登山口のバス停があったりする。
そんなところから信州辺りだと、2000mくらいから見られる植生が広がっているのは
緯度の関係だと思うが、ちょっと不思議な風景だった。
泊まった宿も登山客が大半で、食堂にいると山小屋にいるような錯覚が…(笑)。
宗谷の、貝殻を敷いた白い道では深い霧が出ていた。
天気が良ければ、登ってきた後を振り返れば青い海と空。
視線を戻すと、緑の牧草地に伸びる白く輝く道… という素敵な所だろうが、
この時はこんな様子。
上体を揺さぶる冷たい風に耐えて写真を撮っても、影ができないから妙に嘘っぽい。
バイクだけ切り抜いて張り付けたんじゃないよ。
それにめっちゃ寒い。
道の白さが雪道に見えて仕方ない。
念のためにとインナーダウンを用意して正解でした。
予定ではこのまま進んで宗谷丘陵を満喫するつもりだったが、
カーブの先が見えないくらいの霧になってきたので、かなり苦労してUターン。
私の中では「ホワイトアウトの道」と名付けられたのだった。
エサヌカ線、午後5時。
彼方の路面と空が灰色に溶け合う道。
実はフェリーの中でちらりと、こんな事も考えていた。
この道を通るのは夕方になるだろう。
その時の空によっては、オートバイで行く旅はここでもう、満足してもいいかもしれない、と。
けれども実際考えたのは、次はいつ来るか、という事だった。
まだ満足はさせてもらえないらしい。
***
この時期を選んだのは、オンシーズンの初めでまだ空いているのと、
梅雨真っただ中の本州と違って、比較的安定した天気が続く、という事からなのだが、
写真からも分かる通り、曇りや雨が多かった。
雨具を身に付けなかったのは初日と2日目だけで、以降は朝晴れていても午後からは
雨の装備をする日が続いた。
オートバイの旅においては雨は降るもの、と日頃分かっていても、
ここまで毎日では正直へこまざるを得ないが、災害級の雨に合わなかっただけでも
幸いだったのかもしれない。
今年はそういう年だったのだ。
それでも、ときにはこんな空が見られたのが救いになった。
雨があり、晴れがあるからこそ旅は彩られるのだ。
次回は宿のお話。