この冬は知多で、ちょっと長丁場の仕事をしていた。
知多というと名古屋周辺では、知多半島を指す事が多い。
となると海水浴や潮干狩りや海釣り、あるいは地物の魚を食べに、なんて能天気な連想をしてしまうが、
現場の知多市はそこまで海がすぐそばという訳でもない。
とはいえ家からに比べれば、随分と海の近くまで毎日通っているのは確かで、
それなら仕事を終えてから、直接海辺を目指してみるのも気分が変わって面白そうだ。
そんな訳である土曜の夕方に、妻に電車で現場訪問してもらって、
帰り道はいつもとは逆方向へ向かった。
この日の宿は山海海岸に面して建つ、その名も山海館。
素敵過ぎる佇まいとか絶品の海鮮料理とかそういう事ではなくて、
たまたまお手頃なコースを見つけたのと、海辺なのにちゃんと温泉が出ている、というのが選んだ理由。
外観は庶民的というか、よくある感じというか。
なんだけれども、手を洗おうと洗面所の扉を開けるなり「おお!」と声を上げてしまったのは
書いておかねばなるまい。
仕事柄いろんな住設機器を見るけれど、こんなふうに絵付けされているのは初めて見た。
しかもこの統一感。
のっけからトイレ画像でなんだけど、個室とはいえひとりで眺めるのはもったいないので
ここで強引に共有(笑)。
外国からの旅行者の皆さんにもぜひ見て頂きたい、エキゾチック・ジャパンなトイレでした。
さて、夕食は近頃には珍しく部屋出しだった。
刺身や天ぷらなど海の幸あれこれの中には、こんなのも。
このあたりはフグと並んでタコの漁場でもあるので、出てくるのも豪快。
丸ごと一匹なりにキッチンバサミが付いて、ご自由にどうぞと。
そのままだとかなりインパクトがあるので、トリミングしましたが、
タコを食べない国から来たとしたら、これはかなり強烈なビジュアルかもなと。
メインは魚介の鍋。寒いときはこういうのがいいですな。
ちなみに上のタコを鍋で煮てしまうと、出汁が黒くなってお勧めできないそう。
締めには仲居さんがたっぷり出汁の効いた雑炊をしてくれて、満腹でごちそうさま。
温泉は少しこなれてからに…と、布団を掛けて休んでいたら
不覚にも思いっきり寝入ってしまって、気が付くともう朝焼けの時間だった。
よくよく周りを見渡してみると、日の出も日の入りも一望できてしまうすごい立地。
早起きついでにそんな眺めを見ながら温泉に浸かった。
余談だが知多の温泉に関しては、火山も近くにないこんな海辺に都合よく温泉が出るとも思えず、
個人的にはかなりナナメに見ていた部分があるのだが、それは偏見というものだった。
加熱している低温泉はあるものの、かけ流しのできる湯量だったり、
50℃以上の源泉を持つところもあるそうで、南知多温泉郷の名の通りまっとうな温泉でした。
海辺らしい塩気の強いお湯はなかなか良かった。
朝食はよくあるバイキング形式なのだけれど、何種類かの干物もバイキングになっていて、
食べ比べができる。
山の温泉宿も好きだが、こういうのは海辺ならではの楽しさだな。
宿でも飲めるのに、喫茶店でコーヒーが飲みたいとわざわざ最寄り検索で探して、
出発早々、道草。
知多半島の先端近くは起伏が大きく、海を背にして進むとじきに山の近くにいるような景色になる。
そんな中で見つけたのはなかなか居心地の良い店で、今度はオートバイで来てみようと思った。
帰りは陶器の町、常滑へ寄り道。
少し前に割ってしまった美濃焼の飯碗を、今度は常滑焼で探そうと、常滑焼卸団地へ。
ここはセラモールと呼ばれているので、陶器のショッピングモールみたいに思う人もいそうだが、
元は問屋街的な場所で、それを一般客にも開放しようと今のようなスタイルになったらしい。
なので軒を連ねる店によって若い女性の店員さんだったり、問屋のおっちゃんだったりと
品揃え以外にもカラーがいろいろで楽しい。
自分は器の趣味は持たないけれども、陶器の様々な表情に触れるのは楽しいし、
この文様はこんな技法で作られる、なんて事に気付くのはなかなか興味深い。
器好きの人の気持ちが、少し分かったような気がした。
そんな事を思いながら選んだのはこんなの。
釉薬の艶やかさはなく、かといってざらつきもない。
卵の殻のような肌はどうやって出すのだろう?
我が家はこんな茶碗を片手に、春へと向かうのであった。