中央道を上って中津川からR19を北に進み、開田へ。
その後は野麦峠から木祖に戻り、権兵衛峠を越えて伊那へ出るか、
あるいは久々野へ抜けて、下呂から馬瀬川沿いの山間路を下って行こうか。
その時の気分で決める事にして、出発。
この日は初夏を通り越して夏日になる予報だったけれども、朝から山あいを北に進んでいれば
季節を巻き戻しているかのよう。
木曽福島の道の駅はツバメ密度がえらく高く、軒下はまるで集合住宅のようになっていた。
見るたび思うが、ツバメは他の鳥とは別のステージに生きている気がしてならない。
小型の鳥はほとんど滑空というものをしないが、ツバメは空間を文字通り滑るように飛び、
羽ばたけば羽ばたいたで、ヒラヒラと大型の蝶か蛾のような独特の羽使いを見せる。
ホントにそれ、羽毛でできてんの?
しかも他の鳥が警戒して近づかない人間の生活エリアに、直接巣を作る度胸の良さ。
そんなのを好きなだけ眺めていられるのも、小さな幸せのひとつだ。
R361の白樺並木は、沸き立つような新緑。
若い頃はどちらかというと、秋から初冬の木々のある風景が好きだったけれど、
いつの頃からかこうした命溢れるような緑を見ると、それとは異なる妙な感慨を覚えるようになった。
これは自分自身がそういう季節から遠ざかった証、なのかもしれないな。
開田と言えばお気に入りの蕎麦屋があって、一人で来た時の昼はたいていその店と決めていた。
コロナ禍以降なかなか足が向かなかったが、無事乗り越えていてくれるだろうか?
などと思っていたのだけれど。
よかったよかった。
自分にとっての蕎麦の基準はここなのだ、と再確認。
さて、木曽らしい山あいの風景が続く野麦峠から、対照的に空が広く感じる伊那路も捨て難かったが、
そうするとどこかでまた中央道に乗る事になる。
でも朝の工事の様子から、帰りは避けた方が良さそう。
やはり久々野でR41に入り、下呂から山道をひたすら行くルートを取る事にする。
うねる路面を見つめながら、減速とリーンと加速を続けて、金山湖で一息。
最後は去年の秋に、若い頃からのバイク仲間が教えてくれたトンネルに道草。
でも崩落防止の補強をやり直したせいか、前回より山肌が妙に殺伐とした見た目になってがっくり…。
あと、ここはやはりセローで来るべき所だなと悟って家路に着いた。
久々のツーリングは、そんな道程だった。
トンネル以外は自分にとっての定番ルートで、もう何度も辿っているのだけれど、
その時々によって印象が違って飽きない。
それに若い頃、TZRやSRXで走った時の断片をふと思い出したりして、
そんな頃よりいくらかマシに乗れているだろうか、などと考えたりもする。
今と過去を繋げてくれるのも、時々走りたくなるこの道なのだ。
***
コロナ禍以降、オートバイでは妙に出不精になってしまい、それに慣れつつもあったが、
そろそろまた外に目を向けてもいいだろう。
かつてのように移動の衝動に突き動かされるような旅は、もうできないかもしれない。
でも足元の砂利や草花に目が行くような移動だって、心の根っこで感じるものは同じ、はずだ。