さて、また一年が動き出した。
単に日付が変わるだけと言えばそれまでだけれども、
大晦日から元旦にかけてはとてつもなく大きな歯車が、
ひっそりと滑るように隣の真新しい歯車群へとスライドしていくような、
そんな気がいつもする。
こういうイメージは人によって様々なのだと思うが、自分にはオートバイや自動車のギアが
入れ替わっていくような、そんな様子が想像される。
時間というエンジン自体は絶えず回り続けていて、年に一回クラッチを切ってシフトアップする。
クラッチを切るのは自分。
今回は12月30日にクラッチを切り、1月6日に繋いだ。
その間の出来事を書いておこう。
今年の元旦は小雨の降る、ぼんやりとした朝で始まった。
いつも通りに起きて、職場に合わせて元旦から仕事の妻を送り出した後は、
久しぶりに文庫本をめくったりしながら過ごした。
暮れに実家で片付け物をしていたときに、自分が若い頃に読んだ本の束が出てきて、
そのうちの一冊を持って帰ってきたのだ。
処分するつもりで縛って、なんでそのまま再び押し込まれていたのか
自分の事ながらよくわからないが、オートバイが出てくる短編が混ざっていたので
せっかくだからもう一度目を通してみようかと。
間違いなく読んだはずなのに、内容は忘れている話の方が多くて、
まるで買ったばかりの本を読んでいるようだった。
ここまで忘れていると、若い頃の読書ってなんなのだろうと思うが、
過ごしてきた時間に比べて覚えている体験なんて、ほんの一部に過ぎない。
本の内容なんて忘れて当然か。
というか、自分だけか…?
中には途中でなんとなく思い出す話もあったのだが、20代の頃と、
眼鏡をかけないと小さな文字を追い難くなった今とでは、読後感が違うような気がする。
そういう意味でもなかなか楽しい時間だった。
昼は大晦日に実家で貰ってきたお節を並べて。
雑煮も自分で作る。
あとで落花生も食べよう、とか思いながら。
食べてばっかりだな、とも思いながら。
***
翌日から、妻も2日間休み。
夕方まで二人でのんびり過ごして、妻の実家へお年始に行き、皆で鍋を囲んだ。
どちらの実家も近いから、我が家には帰省というイベントはない。
離れて暮らす家族に会いにいく、という盛り上がりには欠けるけれども、
たぶんその方がお互いにとって良い事なのだろう、と思う。
以前こんな記事を書いてみたこともあったけど、
これは私にとっての身勝手な憧れのひとつなだけだ。
たとえ一つ屋根の下で暮らしていなくても、なにかあった時に助け合える距離で暮らすのが
やっぱりいいのだ。
何年か前の冬にTDMで行った、蒲郡の辺りの海辺へ出かけてみた。
その時は強い西風でとても寒かったのを覚えているが、今回は風もなく、とても穏やかだった。
写真を保存しているフォルダを見直すと、我が家はどういう訳か冬になると海辺へ行きたくなるらしい。
なんなんだろうな。
初日の出、ではなく初日暮れは吉良の港で。
ナビに帰り道を頼むと、影の伸びる時間に通ったら雰囲気の良さそうな並木道を見つけて、
今度はそんな写真を狙って来ようと思ったりして。
今年はもっと、デミオでもTDMでも写真を撮りに出かけよう。
***
もちろん、買い物にも出かけた。
部屋着のフリースを新調して、暖かそうな肌着も。
そしてツーリング用に履いているモンベルの、
ジオラインの五本指ソックスと、防水スプレーを一本。
と、絵にならないものばかりなので写真にはしないけれども、
そういえば結局クリスマスには何も買えずじまいだったのを思い出して、
妻には小振りの革の財布を買い、自分は手袋を買ってもらった。
表はやわらかな山羊革。ゴートスキンというやつかな。
ウールの内張りがされていて、薄くても風は通さずなかなか暖かい。
裾の縁取りとステッチは淡いブルーグレーで、これってどうなんだとも思ったが、
黒字に赤のステッチみたいな、ありがちなのよりはいいかと。
それよりオートバイのグローブにあるように、指先が外縫いで当たりがいいのが気に入った。
たいていこの手の手袋は指の関節が窮屈だったりして、手に合わないことが多いのだが、
これは珍しく、初めから手に馴染みそうに感じた。
長さには気持ち余裕があって、指に合わせて皺が入るとぴったりになるだろう。
自分は指先が冷えやすいので、外を歩くときの他に、
冷えた車内で運転するときにも手袋をすることが多い。
この冬は役に立ってくれそうだ。
***
その他に初日の出ではないけれど、明け方の高速へTDMで乗り出したことも。
それはまた別のお話とする事にして、こんな数日の後に私は、
今年の日常へとクラッチを繋いだのでした。