先日、なぜかツーリング中に試乗する機会に恵まれた二台についての覚え書き。
国産だろうとBMWだろうと、幹線と農道を少し走ったくらいで判ることはそう多くはないんだけれど、
動かしてみた第一印象を忘れないうちに。
先日、なぜかツーリング中に試乗する機会に恵まれた二台についての覚え書き。
国産だろうとBMWだろうと、幹線と農道を少し走ったくらいで判ることはそう多くはないんだけれど、
動かしてみた第一印象を忘れないうちに。
R1200RとGS、どっちがいい? と聞かれて迷わず選んだのは、現BMWモトラッドの屋台骨、R1200GS。
このところのニューモデルは足着きの向上を狙ってか、妙に肉の薄いシートを持つモデルが多い中、
試乗車のGSはマシンのキャラクターに見合った肉厚のシートが付いていた。
またがってスタンドを払ってみると、身長171cmの自分には両足べったりではないものの、
TDMとそれほど差はないような足付き。
ラオウの愛馬のような巨大さはなく、ひと安心。
例の左右にあるウインカースイッチと、右手親指の位置にあるそのキャンセルボタンなど
簡単にレクチャーを受けた後、拍子抜けするほど軽く切れるクラッチをそろりと繋いで国道に出る。
2速3速とややラフにアクセルを開けてみれば、ガアアアアァ… と、思っていたよりワイルドな音と共に加速する。
左右に突き出すシリンダーは600ccずつもあるのに、交互に爆発しているようなパルス感はあまり感じられない。
ドヒュヒュヒュッといった回り方をイメージしていたので、ちょっと意外だった。
信号の多い国道から外れ、往復車線のある農道を行ったり来たり。
ゆるいS字やカーブを抜け、何度か加減速をしてみる。
だんだん感覚が慣れてきたところで、コンビニの駐車場でUターン、来た道を戻ることに。
着座姿勢は外観そのままの、大柄なオフ車のそれで、思ったよりスクリーンが遠い。
シートはお尻から内股の広い部分を面で支えるといった感じだが、シートスキンの内側の反発が絶妙で
どこまででも快適に走って行けそうな気がする。
BMWに乗ると距離感が狂うと聞くのは、こういう部分の出来がいいこともあるのだろうな。
戻る途中、唐突に右折する対向車にどっきりするが、ブレーキとフロントフォークの
実力を垣間見ることになる。一言で言えば“剛”。
試乗車はフル装備のグレードということで電子制御のサスペンションが奢られおり、
乗り心地重視からスポーツ走行寄りの3段階に調節できるので試してみた。
試乗程度ならやはりノーマルが一番合っているように思えたが、積載量や路面状況、スピードレンジに応じて
走行中にボタン一つで設定が変えられるのは、ツアラーとして心強いはず。
どこへでも、どこまでも走って行きたくなる旅バイクの王道なのは、間違いなさそうだ。
***
続いて乗ったのはF800R。
GSに乗った直後なのを差し引いても、800ccとしてはコンパクトな車体にまたがると、
バーハンドルとはいえ軽く垂れ角の感じられるハンドルと高めのステップで、
ライディング・ポジションはネイキッド・スポーツといった感じ。
セルを回すとそれにふさわしい、細かく弾けるような排気音が勇ましい。
GSと違って、はっきりした輪郭が感じ取れるような音だ。
ガララララッとその気にさせる音を響かせて、先ほどと同じルートで走ってみる。
乗り味はダイレクトで、サスもブレーキもかっちりした印象。
こういうマシンは山道で乗ってこそ、なのだろうけど夕暮れ時の試乗ではそういうわけにもいかず。
旅バイクというよりは日帰りでワィンディングに出撃、という乗り方が合っているように思えた。
ついでに言うとミドルクラスとはいえ、各部の造形はなかなか凝った作りでカッコいいのだ。
***
どっちが欲しいかと言われれば、この2台で言うのならやはりGSだろう。
今の自分のバイクとの付き合い方を考えるまでもなく。
800Rも面白かったけれど、自分にとっては入力に対して常にダイレクトな反応をしてくれるより、
ある程度中途半端な、というのか、おおらかな部分があった方が好ましい。
鷹揚な、と行った方が聞こえがいいかな。
カーブの先を真剣に見つめて走るのにも最大限付き合ってくれるし、時には舞台裏に下がって淡々と走るのに
徹してくれるような。
四輪と違って乗ることに対しては、ある種の前向きさが常に求められるのがバイクだと思っているものの、
そうそうのべつやる気満々でいられる訳もない。
出先で思いのほか疲れたり、体調の変化もたまにはある。
あるいは暑さ寒さ、悪天候に対しても、我々の薄皮のような装備はしょせん外気に剥き出しだ。
そういう時は無理に走らないのも賢明な選択の一つだが、一息整えて走り出すなら先の前向きさと同時に、
いつもより引いた目線でいる方がいい。
そんな時に頼りになるのは圧倒的なハイパワーや爽快なコーナリング性能より、よくできた鷹揚さじゃないだろうか。
もちろんどんな状況だとしても、ものともせずカミソリのような乗り味のバイクで突き進む人もいるだろうから
なにを求めるかは人それぞれ、それがバイクの面白いところでもある。
でも今の私はそういうバイクに魅力を感じているし、だからTDMはなかなかいい選択だったと思えるのだ。
さて、そんなTDMのさらに上を行くであろうGSに次は決まり! と思ったかといえば実はそうでもない。
あまりに王道過ぎるのがひっかかるのだ。
大きな問題の資金もなんとかして、乗り始めればたぶん後悔はしないだろう。
後悔どころか、ブログのタイトルがLife & Wonderful ride なんて変わるかもしれない(笑)
でも、いいと分かっているバイクに乗るのは、まだ後でもいいような気がする。
あと、世界に冠たるR1200GSが、はたして自分に似合うか? というのもある。
いや、傍目にはともかく自分の中で、自分が乗っているバイクにふさわしい乗り手かと問うた時に、
胸張って頷ける自分でいたいでしょ。
今はまだだなぁというのが、正直なところなのだ。
とりあえずタイヤとチェーンも替えたことだし、もうしばらくはTDMに乗るつもりだけど、後のことは神のみぞ知るお話。
F800GSの試乗車でも出たら、教えてくださいね。hirookaさん。