とはいえ、そういう時計の知識はとんと持ち合わせてはいないので、
どんなものにしようかとあれこれ見て回っていると、自分が今回求めている形が
だんだん定まってきた。
文字盤は白系か明るいシルバーで、数字表記のない、いわゆるバーインデックスがいい。
それにドーフィン針の組み合わせで、ちょっとクラシカルかつシンプルなもの。
今の流行の文字盤は自分の感覚には大き過ぎるので、できればそれよりやや小ぶりであること。
ベルトはメタル、レザーどちらでもいいけれど交換のできるもの。
メーカーは特に好みはなかったが、できれば国産の時計メーカーのもので、となると
セイコーかシチズン、あるいはオリエントか。
オフでは気に入っているG-SHOCKのカシオは、フォーマルでと考えると
ピンとこなかったので今回は除外。
そんな目で探してみるのだが、当てはまるものは意外に少なかった。
これはいいなと思ったらとんでもない値段だったり、条件には当てはまるのにどこか違和感を感じて
しまったりする。
オートバイやクルマもそうだが、時計の好みにもある種のバランスがあって、
そこから少し外れていると妙なちぐはぐさを感じてしまうのに気付くのだった。
そんな中でセイコー5の存在を知る。
セイコー5というのはセイコーの機械式を広めたブランドで、 クォーツの普及以降は
国内からアジア・中東などに市場を移し、求めやすい価格とそれを感じさせない雰囲気の良さと
何より高い信頼性で、海外では今も高い支持を受けているそうな。
その素性の良さから、カスタマイズのベースとしても人気なのだとか。
近年はその価値が国内でも見直されて、逆輸入されたものがAmazonなどで
普通に手に入るようになっている。
その中でイメージにピッタリかつ値段も手ごろなモデルを見つけた。
シンプルで余分な主張はないが、無味無臭なビジネスウォッチとも違う。
これにちょっといいカーフのベルトなんかを合わせたら、それはなかなか素敵な
姿になるだろう、と思ったのだが、それがどこを探しても完売で無い。どーしても無い。
セイコー5はラインナップも多いけれど、それゆえ単一モデルの販売期間は
それほど長くないのかもしれない。
いや、例によって単に気付くのが遅かっただけか……。
仕方がないので数あるバリエーションの中から似た感じのものを探すのだが、
最初のモデルがあまりにドンピシャだったせいか、どれも微妙にしっくりこない。
考えた末、今回は残念ながらセイコー5から目を離す事にして、
国内現行モデルの中で見つけたのがこれ。
Mechanicalというセイコー5と同じく機械式のラインで、SARB035というモデル。
実は初めのうちから候補には上がっていたものの、セイコー5の3倍近い値段に
腰が引けていたのだが、考えてみればそのまた10倍のグランドセイコーが
欲しいとは誰も言ってない。
いい歳をして定価45000円、実売35000円位の時計でビビッていてどうする、
去年買い替えた90mmの釘打ち機はいくらだ! と、思い直してポチ、
しても良かったが、どうせなら実物が見たいと名古屋駅前のビックカメラへ行ってお買い上げ。
値段はAmazonとほぼ同じ34000円ほどだった。
これには黒い文字盤の033という兄弟機があって、 ネットなどではそちらの方が人気らしいが、
自分にとってはこのアイボリーが あってこそ。
光線によってオフホワイトや淡いベージュに表情を変える、優しい色の文字盤は
見ていて飽きないし、3針とインデックスのバランスも完璧。
堂々と伸びやかなこのモデルに比べ、針が短くどこか萎縮して見えてしまう時計は意外に多い。
それに秒針後端の打ち抜きの菱形が、ほんの少しだけ花を添える。
気に入ったセイコー5があっさり手に入っていたなら、それはそれで満足して
いただろうけれど、結果オーライとはよく言ったもの。
明るい屋外から室内に入ると、蓄光されたルミブライトがこんなふうに見える。
LEDなどの照明や自光するトリチウムと違い、短時間なのでさほど実用にはならないけれども、
これがあるとないのとでは、随分印象が違うだろう。
そしてベルトを替えると、意外にラフなスタイルでも行けてしまう懐の広さ。
すっきりと実直でありながら決して生真面目だけではない、そんな雰囲気の時計を探しているのなら、
このSARB035は年齢を問わず薦められる、と思う。
***
というオチにしようとざっくり書いて、下書きの中に入れたままになっていたけれども、
今回見直しがてらちょっと調べてみたら、SARB035・033共にこの春でなんと廃盤。
というか Mechanical自体がラインナップから消えてしまうとは、いやはや……。
だったらそんなにお勧めするなよと言われそうだけど、せっかく書いたので上げときます。
ちなみに私が買ったのは冬の事。
今はAmazonでも定価を大きく越えた値段が付いてしまって、そこまで出すなら素直に
プレサージュのベーシックラインから探した方が…とも思うが、ちょっと雰囲気が違うし、
何よりこんな小径モデルはもう無い。
こういう地味だけど長く愛されるモデルを、ラインナップの片隅に置いておくのが
セイコーらしいと思ったのだが、小径好きには残念なラインナップがしばらく続きそうだ。
さて、そんな事から今までとは時計を見る目がちょっと変わって、
仕事用を買い替えたりしたので、時計のカテゴリーを作ってみた。
あと、セイコー5についても続きがあるのだけれど、それはまた、別のお話で。