たまには足を延ばしてみる。前編 [Ride]
秋といえばバイク旅。
恒例となった秋のツーリングは、長野から新潟、福島、茨木、群馬を経て再び長野まで。
2泊3日で1200kmを超える、久しぶりにしっかり走る旅になった。
その日、早朝の中央道は所々で濃い霧が出ていた。
カウルやスクリーンに当たり続ける霧の粒子が、みるみるうちに大きな水滴に育って風圧に押され、
再び後ろの霧の中へと飛ばされていく。
そんな様子をシールドの片隅に見ながら、北へ進む。
写真は小黒川PA。
指先が冷えてきたのでグローブを替えたのだけれど、全行程で防寒を意識したのはここだけ。
晩秋のようだった前の週とは違って、おおむね穏やかな天候に恵まれたのは幸いだった。
長野道に通勤の車が増え出した頃、集合場所の梓川PAに到着。
一番乗りはいつものように前日から長野入りしていたラスカルさん。
ほどなくharryさんも着いて、とりあえずは上信越道を信州中野まで。
千曲川沿いにR117で北上し、信越さかえの道の駅で一息。
朝が早かったのでもう小腹が空いて、おやきでも、と思ったら定休日らしい。
代わりに農産物を扱う別棟で、1個売りのリンゴを買ってみた。
この季節の長野らしい、美味しいリンゴ。
秋だねぇ。
十日町を越え、小千谷に入る小さな峠の途中ではふいに雨に降られ、
高架下で雨宿りを。
今回はカッパは着なくても済みそうと思っていたが、いくつか山を越えて行くうちには
こういう事もやはりある。
私とラスカルさんは当然のように雨の支度を始めるけれども、
雨に対して独自の信念を持つharryさんは、すぐに止む事を念じながらそのまま出発。
幸い間もなく雨は上がって、この辺りの特産であるへぎそばの昼食を。
へぎそばファンのラスカルさんがめどを付けておいてくれたのは「わたや」という店で、
なかなかの老舗らしい。
薬味には菊のように絞った辛子が。
蕎麦に辛子?と思うかもしれないが、繋ぎに海藻の布海苔を使う事によって
滑らかで腰のある歯応えを持っていて、いわゆる「日本蕎麦」とはまた別の食べ物になっている。
わさびとは違った辛味も、こういう食感にはよく合って面白い。
そんなへぎそばにきのこの天ぷらを付けてもらって、旅先ならではの食事になった。
その後は、山古志など東日本大震災のニュースで知った地名を
いくつか目にしながらR252を西へ。
東北に足を踏み入れているのを実感する。
降り続くような雨ではないものの、時おりシールドには雨粒が当たって
この辺りではすっきりしない空模様だった。
さっきまで降っていたような路面が、所々で現れる。
雨雲レーダーはこれから幾つかにちぎれたような雨雲が、行く先を横切るのを告げているので、
念のために再び雨の支度をして、山あいの道を進んだ。
ひたすらウェット路面を行くうちにすっかり日は落ちて、
真っ暗な中で辿り着いた羽鳥ダムの手前から県道37へ。
ドライビング・ランプを増設したRTの照明に助けられながら向かったのは、
タイトな山道を越えた先、レジーナの森という施設。
路肩には控えめにLEDの照明が伸びているだけで、周りは森の闇に沈んでいるが、
管理された広大な敷地の中にいるのは感じ取れる。
管理棟で受付を済ませた後、3台のバイクを停めたのは湖畔のコテージの横だった。
中は寝室が2つに小さなキッチン付きのリビングまであって、
男3人のバイク旅にはもったいないくらいの内容だった。
そしてリビングの前にはタープが張られてランタンが灯され、
さらにバーベキューグリルには炭火が熾きていて、食材まで届いているという、
恐ろしく至れり尽くせりの環境が用意されていた。
今回もラスカルさんの手配で、そういうプランで頼んでおいたとの事。
毎度のことながらどこで探してくるのやら、この手の情報はさすがだと思う。
たいていは食べる・飲むに徹するharryさんが、今回はどういうわけか鉄板奉行として活躍。
ラム肉にソーセージ、野菜盛り合わせから締めの焼きそばまでトングを振るってくれた。
ちなみに私は撮る・食べるの担当でした♪
食後はそれぞれの好みをカップに注ぎ、ナッツをつまみながらのひと時。
冷えてきた風に残った熾火が心地いい。
タープは湖に面していて、対岸の灯りが水面に揺れている。
三人でつらつらととりとめのない話をしつつ、ぼんやりと湖面を眺めていると
その日走りながら見た記憶の断片が、浮かんでは消えていく。
そんなのを後から独りで噛みしめるのも、オートバイの幸せだ。
管理棟にある温泉から戻ると、TDMのテールを小さくひとつ叩いてから部屋に入った。
今夜は早く寝よう。
***
誰かの足音で目が覚めて、時計を見ると6時少し前。
外に出てみると日が差し始める前の空は快晴。
なのに予想していた山の朝の冷え込みが、ほとんどないのが不思議だった。
昨夜は闇に包まれて辺りがどんな様子なのかよくわからなかったけれども、
コテージを一回りするうちに、これはなかなか素敵な所なのだという事に気が付いた。
オフシーズンの平日にも関わらず閑散とした感じはなく、
周りのコテージにもそこそこ車が停まっているのを見ると、人気のある所なのだろう。
ハイシーズンはこの静けさが夢のような、大変な賑わいになっているのかもしれない。
朝食はレストラン棟へ。
朝はトースト派なのだが、肉じゃがが美味しそうだったのでそんなのも。
どれも真っ当な内容で、なかなか充実したバイキングだった。
ここはコールマンが運営しているそうで、アウトドアスポーツ全般が楽しめるように
作られているらしい。
この湖も人造湖で、ニジマスが放流されているので釣りも楽しめるとの事。
実際コテージからの来る途中、フライを振っている人を見かけた。
自分は釣りはやらなくなってしまったけれど、カヌーを借りて早朝の湖に漕ぎ出してみたら、
気持ちいいだろうな、なんて思ってしまった。
さて、パッキングを済ませたら例によってこんな写真を撮って、出発。
***
と、いうところで今回はここまで。
後編へ続きます。
今回は本当によく走りましたね。
走りながら、あらためて「秋って陽が短いんだなぁ...」と思ってました。
初日の南会津周辺や2日目の群馬県内も、
暗くなって景色が早々に見えなくなってしまったのがちょっと残念で。
レジーナの森は想像以上に快適なロケーションで気に入りました。
あそこを拠点にして何泊かして、裏磐梯とかまで足を延ばしたら楽しいでしょうね。
こうやって、行ったことのない場所にもまだまだ楽しい場所があるのを知ると
地図を眺めているだけで結構想像が広がったりして。
次回も「雨具はお守りとして持っていく」旅になるといいな(笑
by harry (2016-10-29 23:35)
★harryさん
秋の陽はつるべ落としとはよく言ったもので、
11月なんて4時過ぎたらすぐ真っ暗ですよ。
我々のツーリングも去年から10月だけど、日照時間と気温で
考えたら正解かも。
3人の位置関係だとやはり甲信越が中心になって、
まあ走り甲斐のあるエリアだからいいんですが、
たまには他の地域にも行ってみたいですね。
雨は降るもの、と思って(笑)。
by YASH (2016-11-03 22:32)