SSブログ

山の彼方の空遠く。 [Ride]

そこへ行くのを前提としてもしなくても、地図を見るのは楽しい。
特に山や谷間を、うねりながら伸びる道を辿るのが好きだ。

近頃はそういう所をGoogle mapの航空写真でも見るようになった。
木々の密度やその間から覗く地面の様子など、地形図では見えなかった
土地の表情のようなものが感じられて、見ているだけでも飽きない。

ggr.JPG

連休最終日に出かけたのも、そうして見つけたところ。
円で囲んだ周囲が、周りと風景が明らかに異なるのはなぜだろう。
道は色からして未舗装の林道だろうか。
フラットダートならTDMでも行けるかもしれない。
中心辺りは潅木の間から視界が開けて、南アルプスの連なりが望めるとしたら…。

そんな事を考えながら地図を見るのは楽しい。
よし、行ってみようという気になる。

現実は道があったとしても山の持ち主が拓いた私道だったり、
工事用の道だったりして立ち入れないことも多いのだけれど、それはそれでかまわない。
それも含めて確かめに行くのが面白いのだ。

 

 

 

現地はここ数年、今頃になるとよく行くようになった南信エリアの大鹿村。
鹿塩温泉の辺りから大池高原キャンプ場へ向かう途中に分岐があるはずで、
とりあえずはそこを目指してみる。

前日は穏やかで、汗ばむような初夏の陽気だったのが一転して、
この日は早朝から冷たい風が吹いていた。
ジャケットのベンチレーションを全部閉じ、ネックゲイターを巻いていても路上ではまだ寒いほど。
中央道から見る山を覆う新緑は、遠目にも強い風に枝を揺らしていた。

R152から離れて鹿塩温泉へ向かうと、すぐに「塩の里」という
道の駅のような施設が目に付いたので、そこで一息。
やっと気温が上がってきて、陽射しが嬉しい。
日向にTDMを停め、冷えた体を温めてから出発。

例の分岐は、地図にもナビにも出ていないので、現地を見ないことには何とも言えない。
一応キャンプ場を目的地にセットして、時おり枝分かれする山道を進む。

春の山.JPG

今年は花桃の盛りが早かったのか、この辺りでもほとんど見かけることはなかったけれど、
それでも時にはこんな桃や山桜の白い花が、目を楽しませてくれた。
そんな中の九十九折れをぐんぐんと上って行き、辺りはやがて落葉松林の中へ。

好きな匂い.JPG

電波が繫がっているうちに衛星写真を出しておいたスマートフォンと、
ナビの表示を見比べながら、時々停まって分岐を探す。
やがて深く回りこんだ左コーナーの奥に、錆びたチェーンの張られた枝道があるのを見つけた。
チェーンには「関係者以外立ち入り禁止」の古びた看板が。
写真はあえて撮らなかったけれど、間違いない。

入口付近の轍は下草に覆われかけていて、しばらく車両は入っていない様子。
バイクなら入っていけるだろうが閉鎖されていては仕方ない。
それでもひとつ、パズルは解けたのだ。

食事ができるはずだった.JPG

そんなふうに思いながら、とりあえずキャンプ場まで行ってみることにする。
開けた路肩から奥へ入れるようになっていたので、ここがそうかと入ってみたらどうも雰囲気が違う。
駐車場の奥は展望が開けていて、中央アルプスを望む位置に店舗のような建物が。
食事でもできるならちょっと早いけど昼に、と思ったら入口は板で塞がれていた。
横には手書きで、移転の知らせ。
ふむ。

TDMの前にあるのは桜の木で、満開の頃ならアルプスをバックにさぞや見事な眺めだろう。
そんなタイミングの風景にはなかなか出会えないのだが、建物の裏手では
ひっそりと遅咲きの山桜が盛りを迎えていた。

遅咲き.JPG

キャンプ場はそこから少し先にあって、どんなところか覗いていこうと思ったら、
ちょうど利用客の出発時と重なったらしく、小さな駐車場は車がひしめいていて落ち着かない様子。
まあそれならそれでと、トイレだけ借りて先へ。

そりゃそうだ、メジャーどころではないとはいえ、ゴールデンウィークだもんね。

 

大池.JPG

その先にはキャンプ場の名の元になっている、大池という名の池があった。
山の中には珍しく、自然の池のようだ。
水が茶色っぽいのは汚れているというより、流れ込んでいる沢の泉質によるものらしい。
水辺に下りてみると、蛙かなにかの短くつぶやくような鳴声が、どこからか聞こえてくる。

この池には伝説があって、昔、近隣の村で来客や祭事のある際には、
前日池に来て何人分要りますと言っておくと、翌朝には揃いの漆器が人数分、池のほとりに置かれていたそうだ。
ある時、その一つを壊してしまったのにそのままにしておいたら、その後、何度頼んでも器は現れなくなったという。
そんな事が書かれた立て札があった。

うん、それはうやむやにしようとしたヤツが悪い。
そんな事を隠してたら、誰だって怒るよな。

なんて思いつつ、遠野物語だかで似たような話があったのも思い出していた。
地域は違えども、昔は不思議な事があったんだな。
そういうお話のけっこう好きな私は、途中の集落を思い出しながら水面を眺めたのだった。

日に日に.JPG

 

このまま進むと一昨年だったか、夕立神パノラマ公園に行ったときに寄ろうと思っていたルートへと続く。
少し迷ったが、その道はそこへ行くためだけの日に残しておくことにしよう。
そんなふうに考えて、この日は戻ったのだった。

何度でも来る.JPG

と、肝心な目的地にはたどり着けないこの日だったのだが、
こういうツーリングの場合、大半がこんな結果に終わる。

が、メゲない。

自分の場合、走り出す目的は点じゃない。
そこへ向かって、うろうろして、納得して帰る線を辿るのが目的なのだ。

 

名残り桜.JPG

そういえばノーマルハンドルに戻したTDMは、タイトな日本の山道であっても
好印象は続く。
これを緩やかな立ち上がりのハンドルバーで再現がなるか?
要検討。

 

 

***

 


ところで相当久しぶりに、バイク用のジャケットを買った。
この日はそのテストでもあったので、次回はそんなお話を。

次回のココロだ.JPG

 


nice!(7)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:バイク

nice! 7

コメント 8

FTドルフィン

残念!
しかし気になる〜
木々の並びが、人工的にも見えますし
これだけ地面が茶色だと
草が生えて無い???

地図にまつわることもそうですが
事前に結果はわかるようになったけど
実際の行動では結果じゃなくて
過程が大半を占めているわけで
そこが重要部分なんですよね

by FTドルフィン (2016-05-15 06:28) 

HIRO

こんにちは。
今回は、色々残念でした。
目的地に着くのではないのならそういうのもアリですね。

グーグルマップとかで、(角度可変な)鳥瞰的に見るのも好きです(笑)
by HIRO (2016-05-15 11:59) 

YASH

★FTドルフィンさん
そう、円の所なんてなにげに放射状に見えますよね。
植林してまだ年数が経ってないのかとも思うんですが、
それにしては下草がここまでないのが不自然だし。
ぜひ現地を見てみたかったのです。

とはいえ、極端に言うと目的地はわりとどうでもいいんです。
そこへの行き帰りに何が見えて何を感じるだろう、みたいな事が
本当の目的かもしれません。
だから途中で横道に反れて、思ってたのと全然違う所に行っても平気(笑)。

★HIROさん
いえ、わりとよくあるパターンなので(笑)。
そのわりにはけっこう楽しんできましたよ。

残念といえば本文には書かなかったけど、途中の山道沿いに、
うどんカフェというそそられるお店があったんです。
でもお休みだったので、帰りに塩の里でざるうどんを食べたら
それが見事に惨敗だったという…(涙)。

by YASH (2016-05-17 22:00) 

harry

目的地、なんてあくまで理由にしてあるだけで
途中経過こそが旅そのものなんじゃないかと自分も思います。
あ、それで「迷わずにまっすぐ目的地に着いちゃう」ナビが嫌いだったのかな(笑

地図も航空写真も、ほんとに楽しいですよね。
海外で旅をするとき、事前に地図を眺めて地形を頭の中で想像して出掛けて
実際の空間とどれだけ違うのか試してみたら、なかなか楽しめました。
よし、ちょっとGoogleMap眺めてみようっと。

by harry (2016-05-18 21:15) 

mani

ストビューで看板を見ると「造林作業道」と書いてあるようなので、
まさに植林育成作業中だから入るなってことなんでしょうね。
樹木も単一種のようですし。
そこから南に5kmほどの山にも同様の放射状の筋が見られますね。
最近の林野庁のスタイルなのかも。

……あぁ、地図は時間を奪うのでホント危険です^^;;;

by mani (2016-05-19 09:12) 

YASH

★harryさん
そうそう、一人で行くツーリングなんてこの道を通ってみたいとか、、
〇〇号線以外の道でこっちへ抜けたいとか、そんなのがほとんど。
自分の場合、美味しいものや見どころよりも、そういう道端の風景が見たくて
出かけるんだと思います。

ナビの示す道は迷わないけど、つまらない、と思ってましたが
ゴリ江さんは時々意外な道を示してくれるので面白いです。
自分ではまず通らなかったであろう道を、気付かせてくれたりと、
そういうのはナビあっての経験でした。

★maniさん
あぁん、ストビューで見たら簡単に答えが出てたとはー!
しかし遠く離れた山中の道端の文字を、現場で弁当食べながら読めるとは、
えらい時代になったもんですな。
見てきたのとはちょっと雰囲気が違うのは、
撮影時からのタイムラグなんでしょうか。

こうやって上から見ていろいろ想像すると、誰も知らない絶景って
案外あちこちにあるのかもしれませんね。

by YASH (2016-05-19 22:52) 

mani

ストビューの日付は2014年9月でしたから、
ちょっとした時間旅行のようですね。

白州産業っぽいジャケットのお話も楽しみにしてます^^
by mani (2016-05-20 10:15) 

YASH

★maniさん
ちなみに大池から尾根ひとつ越えるとそこなんだよなぁ…とか思ったり。
いや、もう藪漕ぎ必至の季節なんでやらないですけど。。

>白州産業
ガテンな作業着メーカーみたいな名前ですが、
ズバリそうなんですよね~。
ぼちぼち書いてますから、しばしのお待ちを。

by YASH (2016-05-20 22:20) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。