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読書の時間。 [Life]

シバラクさんの昔読んだお気に入りの本の話に触発されて、
そういや、まだあったはずだぞと、押し入りの奥から掘り出してきた何冊かの文庫本。

それを含めて、久しぶりに読み直す気になっている本のお話。

 



ハップ・ハッピー.jpg

上はSFの、「歌う船」というシリーズの中の特に好きだった3冊。
全巻揃えたんだけど読まなくなって久しい頃、これらを残して他は売ってしまった。
他がよくなかった、というよりストーリーと翻訳の相性なのだと思う。

ひとりの翻訳家がシリーズを通して手掛けているわけではないので、
訳によって会話のリズムや思い浮かぶイメージが異なるのは仕方のない事なんだけど、
個人的には嶋田洋一氏の訳がもっともキャラクターらしさが引き立っているように感じて、
物語にすんなり入り込める。
文字を追うごとに、まるで映像が目に浮かぶようなのだ。
あまり敵とか悪役の出てこないこのシリーズの中、「戦う都市」に登場するそれの最凶で最悪ぶりの描写などは
まさにビジュアル的。

自分もこんな描写ができたなら写真なんか使わずに、読ませるblogが書けるのに、なんて思ってしまう。
積み重ねてきたものの圧倒的な差、だけではないんだろうけれども。

シリーズタイトルにもなった「歌う船」を、この人の訳でぜひとも読んでみたかったが、
そんなことをいってもはじまらない。
別の訳者で新訳版が出ることがあったなら、また読んでみたい。

しばらくはこの二つのお話を、読み返してみることにしよっと。



***




訳といえばタイトルだけでも名訳だと思ったのは、ジェイムズ・ティプトリー・jrの「たったひとつの冴えたやりかた」。
原題は「The Only Neat Thing To Do」。
英語なんてからきしダメな私も、なんとなく意味はわかる。
でも、数ある日本語の単語の中からこれを拾い上げるセンスは、私には百万回考えても得られないだろう。
もちろんタイトルだけじゃなく、中の3つの物語もけだし名作。

これも久しぶりに読みたくなって、持っていた妻に聞いてみたら「もうないよ」とつれない返事だった。
ならばとAmasonへ行ってみたらさすがに名作だけあって、萩尾望都だったかの見覚えのある表紙の他に
改訳版が出ていた。

でも訳の違いで、これはオレの知ってる「冴えたやり方」じゃない! となるのも切ないので、
以前読んだ方の中古(194円也)をクリックしかけて、ちょっと待て、近所のゲオで見てきてからにしようと手を止める。

で、出かけてきたものの、残念ながら見つからず。
その代わりに、というか全然代わりにはなってないけど、これまた思い出深い本の文庫版に遭遇。
前にもちょっと書いた事のある、原田宗典のバイクにまつわる短編集を手に入れた。

こんな時代もあったねと.jpg

どっちも目次を見ただけで20代前半にタイムスリップ(笑)
BGMはユーミンの「あの日にかえりたい」、とはあえて言わず、
バイクに乗った後ろ姿を感じさせる「カンナ8号線」が気分かな。

大型に乗るなんて夢のような時代だったから、本当あの日に帰りたいとは思わないけど、
無駄なくらいバイクと過ごせる時間だけはあった。
そんな青春の後姿のようなストーリーのほとんどが、タイトルか冒頭を読むだけでどんな物語だったか思い出せる。
たぶん、バイク乗りとしての心の基本構造ができあがった頃に読んだからだろうな。

バイク雑誌に載っていた時に読んで、後から単行本で買ってまた読み直して、それからも
ずいぶん長い間手元にあったはずだが、そういうのに限って本というのはいつのまにか姿を消す。
今度はもう失くさないようにしよう。




***




という、あんまり「冴えてない」展開になった訳だけれど、「冴えた」方はやっぱりAmazonで買う事に。

しばらくは宇宙で過ごしたり20代へ戻ったり。

ときには内なる旅へ出るのもよし、の冬の夜なのだ。


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魔太郎

黄色いドカと彼女の手は私も読みましたよ。
絶対にバイクの後ろには乗らないといってたモデル?の彼女が
ドカのおじさんのバイクの後ろに乗ってたというような話でしたかな?
片岡義男とか大藪春彦も学生の頃に良く読みました。
若い頃に戻りたいかというと、私は戻りたいです。
毎日なにしようかって思えるような時間が中年オヤジには無いですもんね。
by 魔太郎 (2010-02-10 00:41) 

harry

僕も思春期後半から20代前半まで、ハインラインや
スタニスワフ・レムなんかのSFをむさぼり読んでた時期があったっけ。
30過ぎてからめっきりその世界に足を踏み込むことがなくなっちゃった。
なんででしょうね。

ここ数年、小説を読むこと自体から遠ざかってます。
読もうと思って買った本は結構あるんだけど...
暮らしむきが変わった時まで待つかな。。
by harry (2010-02-10 07:51) 

HIRO

こんにちは。
確かに海外物の翻訳は、翻訳される方によって、イメージが変わったりしますね(映画の字幕も同じ(笑))

魔太郎さんと同じく?大藪春彦や片岡義男も、バイクに乗り出してから読んだから、より一層身近に感じられて…
今でも、手元にお気に入りは残してます。
by HIRO (2010-02-10 10:10) 

なおネィ

野沢尚が好きだったんですけどねぇ。
サッカー少年リュウジが主人公の「龍時」の続きが読めなくなって
残念です。

そんなふうに心に残った小説はあるんだけど、
反面、以前読んだことを覚えていなくて同じ本を二度買うことも(笑)
通勤電車の中でしか読まないから、読んだハナから抜けてくんでしょか?

本に失礼ですね、こんな読み方。
はんせー。

by なおネィ (2010-02-10 11:10) 

シバラク

6月が来る前になにかやっちまいそうなシバラクですb
「やっちまいそう」というよりも「やっちまった」が限りなく正解に近い気もします^^;b

「歌う船」シリーズ、読みました読みました!
「戦う都市」はマキャフリィ組んだ相手がスターリングだったので、
他のシリーズにはないスリリングでアクティブな展開になってましたよね~!
その分、訳者の勢いも違ったのでしょうか^^ゞ
記事を拝読して、ティプトリーや萩尾望都なんて懐かしい名前も出て来て、
(そういえば、全部女流作家さんですね^^>記事に登場した作家さん名)
アタマん中が一気に30数年前のSF黄金期にタイムスリップして遠い目をしちゃいました^^ゞ

そんなこんなで、楽しい記事をありがとうございます^^b
今晩も本棚漁り(&引越し時のダンボール箱片付け)をしそうですbb
by シバラク (2010-02-10 15:27) 

うえいぱうわ

原田氏の短編はアウトライダー誌に連載されていた時に
ずいぶん読んでました。
私の場合、SFは宇宙の戦士とか宇宙のスカイラークとか
レンズマンとか海底牧場などでしたね(笑)
ああ、懐かしい。うちの本棚にもまだ何冊かあります。

by うえいぱうわ (2010-02-10 19:06) 

rascal

文字を読むの苦手です(笑)
なんか疲れちゃうんです。
たぶん文字で飛び込んでくる情報を脳で変換するのが苦手みたい。

その代わり耳から入る言葉の情報は脳で映像化しやすいです。
だから、あまり洋楽は聴きません。
英語から変換できないから(爆)
あまり脳を使わずにいられる方が心に届きやすい気がします。

それで、映画もSF物はあまり観ないのでしょう。
面白くてもあまり心に残らないのです。
ストーリーからダイレクトにメッセージが伝わってくるような
ヒューマンストーリーが1番好き。
現存する自分と登場人物の心情が近い程同化しやすいので。

by rascal (2010-02-11 10:22) 

kobaban

最近はミステリばかり読んでますが、前はSF小説が好きでした。
「冴えたやりかた」も「夏への扉」も懐かしいです。でもどんな話か忘れてしまいました。歌う船シリーズは知らなかったです。久しぶりにSFも読んでみようかなと思いました。



by kobaban (2010-02-11 14:01) 

バク

洋書って、翻訳家の雰囲気がそのまま出てしまうのが善し悪しで、相性がうまれちゃうんですよね(^^;
私もSFは翻訳の人を選んでいましたし(^^;
長らく読んでない屋根裏の本を引っ張り出してみようかなぁ。
by バク (2010-02-11 20:15) 

FTドルフィン

すっかり
本を読まなくなってしまいました・・・
通勤時間が長いので
本でも読もうと思っていたんですが
・・・寝てしまうんですよね・・・(笑

いろいろ読みましたが
SFのショートショートが好きでした。
星新一さんが有名ですが
小松左京さんや筒井康隆さん等
SF作家の方はほとんどの方が
ショートショート書いていて
その作家さんの色が
かえって濃く出てて面白いんですよね。
by FTドルフィン (2010-02-13 10:59) 

YASH

★nice!頂いた方々、ありがとうございました。

★魔太郎さん
タイトル作は大人とオンナの現実というか、そんなのを知りながら
自分もオトナになっていくんだなぁとかね、そんなお話でした。
本の中はそんなのばっかりでもないんですが。

私はどっちがいいとも言えませんねぇ…。
時間はなくなったけど、あの頃は夢だと思っていた限定解除も果たしたし、
昔も今もお金がないのはおんなじだし(苦笑)
ただあの頃は、世の中がもっと明るかったことだけは確かだと思います。

★harryさん
私達の世代まで、なのかな。SFの洗礼って。
携帯端末なんてある意味SF以上だから、
今の若い子たちはどうなんでしょうね。

やっぱり忙しくなったからじゃないですか。
あとなんとなくネットをさ迷ったりする時間が、
以前は読書に向けられていたんだと思います。

★HIROさん
そうそう、映画の字幕もそうですよね。
昔テレビの吹き替えで見たのと、レンタルで借りてきたのの台詞が
ぜんぜん違っていたりする事、ありますね。

私もだいぶ処分しましたが、これはというのは何冊か残してあります。
たまーに読み返してみると、感じ方が前とは違っていて
面白かったりもしますね。

by YASH (2010-02-13 21:55) 

YASH

★なおネィさん
誰かに続きを楽しみにさせたままいなくなるっていうのは、
幕引きとしてはちょっと憧れたりもします。
不謹慎な考えかもしれませんけど…。

読んだハナから抜けていくっていうのは私もありますよ。
部屋でじっくり読んでるはずなのに、なんでかなー。
一粒で何度でもおいしいって事にしときましょうか(笑)

★シバラクさん
どう「やっちまった」んでしょうねー、気になるなぁ。
シバラクさんのバイクライフって先が読めないのが楽しくもあり…(汗&笑)

歌う船シリーズ、ご存知だったとはうれしいです。
発掘はうまくいきましたか?
「敵は海賊」といい、妻以外とこんな話ができるとは思いもよりませんでした。
本当にバイクっていろんな縁を運んでくれる、不思議な乗り物ですb

★うえいぱうわさん
原田氏の短編て、最初は何に載っていたのかもう覚えてないんですが、
当時はバイク雑誌もその内容もさまざまで、月初めが楽しみでした。
今は休刊が相次いで、時代とはいえさみしいです。

★rascalさん
ブログ暦は長いのにそうなんですね。ちょっと意外かも。
そちらはバイク関係や日記的なもののほかに、自分の内面を綴るような
記事がありますよね。
そういうのを文字に変換する事より、文字による作品を
自分の中でイメージする方が楽な気もするけど、
頭の中では全然違う事をしているんでしょうね。

私は洋楽も聴くけど、歌詞はやっぱり分かったほうがいいですね。
いいなぁって思う曲はあるけど、洋楽で涙は出ないもんなぁ。
言葉ってやっぱり大事です。

★kobabanさん
おっ、世代的な事もあるのかな。
けっこう皆さん読んでるんですねぇ。

最近は小説も携帯で配信という時代らしいですけど、
あの小さな画面で読むのは、個人的にはブログのコメントまでだなって
気がします。
途中でページをさかのぼって読み返したりするのも大変そうだし。

★バクさん
気が付かなかったけどこの人の訳が好き、というのもあるんでしたね。
翻訳家によって得意なジャンルなんかもあるんだろうし、
そういうアプローチで本を選ぶというのも面白いですね。

★FTドルフィンさん
私も以前比べたら、ほとんどと言っていいくらい読まなくなりましたよ。
時間があるとついネットとかブログに行っちゃうんですよね。
いい悪いの問題じゃないんでしょうけど、頭とココロの使い方としては
本の方が上のような気もしますが。

ショートショート、私も好きでした。
短い文面でどう始めて完結させるかっていうのは、
書き手のセンスが出て面白いですよね。
ブログもそうなんですけどねぇ…(汗)

by YASH (2010-02-14 13:27) 

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